第92回『組織として学び、進化し続けるということ』
2018年10月04日
今号は、対談と対談の間にお届けしている河村甚のコラムです。
●組織を一つにするもの
●ベースとなる組織文化
●組織として学び、進化し続けるための行動
の3つです。
掘り下げて考えてみましょう。
組織として学び、進化し続けるためには、以下の4種類の行動が必要になります。
- 混ざり合い
- 失敗や異色な発想を受け入れる
- 行動量、コミュニケーション量
- リフレクション
これにより、組織として学び、進化し続けることができます。
では、一つずつ見ていきましょう。
1.混ざり合いを起こす
「混ざり合いを起こす」ということは、チームの中で、自分以外のメンバーに関わり掛けること、また、他のメンバーを受け入れること、そして、他のメンバーの発信したものに乗っかる、便乗するというようなことです。
組織として学び、進化し続けるためには、混ざり合いが必要です。
世の中の情報量は多く、技術や環境の変化も激しい中では因果関係が明確な単純な課題の割合が減り、誰も答えを知らない複雑な課題が増えています。このような複雑な問題を解決していくためには、
組織として学び、進化し続けていくことが必要になります。
自然界では、混ざり合いがたくさん起こっており、
非常に複雑な環境の中でも進化し続けている。
これを組織にもあてはめて考えることができます。
例えば、生物の進化では、異なる遺伝子が組み合わさって、新しい次の遺伝子が生まれてきます。
この異なる者同士が組み合わさり、混ざり合うことをコミュニケーションや組織活動の中で表すと、
組織、集団の中にいる人が、周りに関わり掛ける、話し掛けるということです。
しかし、「関わり掛ければいい」と言うのは簡単ですが、
関わり掛けるということは、実際には難しかったり、勇気がいることだったりします。
例えば、
「こういうことをしたら相手はどう思うかな」と不安で、
他者に関わり掛けるということができない。
大人数の席では発言ができない。
「ちょっと元気ないけど」「体調良くなさそうだけど大丈夫?」と
声を掛けることができない。
そういうことがよくあります。
「言ったときに、相手に受け入れられないんじゃないか」
「言ったことで、自分が非難されるんじゃないか」
「自分は間違っているんじゃないか」
ということが怖いから、なるべく関わり掛けないようにする。
これらは人が集団の中にいるときに起こることです。
しかし、関わり掛けるということが、
組織の混ざり合いを起こすときには、とても重要です。
関わり掛けることとセットで大事なのが、受け入れるということです。
受け入れないという状態は、組織の中でよく起こっています。
他者の発言を否定することによって、自分の立場を作ろうとしたり、
部下の発言に対して、「そんなんじゃ営業の結果は出ないよ」「そういう仕事じゃ出世できないよ」などと、上司が拒絶をしてしまうことがあります。
存在そのものを受け入れず、閉じてしまうことによって安心感を得ている。
このようなことが、上司と部下の関係の中に限らず、あらゆる関係の中でよく起こっています。
勇気を出して関わり掛けることと、安心して関わり掛けられるように、受け入れること。
両方がセットで大事になります。
便乗する、乗っかり合う
混ざり合いには、「便乗する」「乗っかり合う」ということも非常に大事です。
「乗っかり合う」とは、誰かが言ったことや行動したことを発展させて、展開していくということです。
これも怖れがあるとうまくいきません。
なぜかというと、
「いいね」「こういう風にしたらもっと良くなるんじゃない?」というようなことを言ったときに、
「自分の意見が奪われてしまった」「流されてしまった」「否定されてしまった」と
受け取られる可能性があるからです。
そこに対する怖れがあるとうまくいかないということになります。
いろんな人が頭の中でいろんなことを考えています。
Aさんの頭の中で考えたことを表に出して、Bさんがその続きを考えたっていい。
これが「便乗」です。
でも、自分で完璧な答えを出さなくてはならないと思っていたり、
乗っかったら悪いな、と思っていたりすると、うまく便乗が起こりません。
意識して「便乗する」ということを起こしていくことが大事になります。
2.失敗や異色な発想を受け入れる
失敗を受け入れることは、学習のために大切な要素です。
失敗しないようにしたり、失敗は恥ずべきものだからと隠すのではなく、
失敗こそリフレクションして学びにつながるものであると捉える必要があります。また反対に失敗を隠す文化になってしまうと、誰も気付かないまま、重大な失敗が起きてしまうかもしれません。
失敗は悪いことばかりではありません。普通はやらないことをやることで、まるで遺伝子が「突然変異」を起こすように、もしかしたら次世代への進化に必要な要素が生まれてくるかもしれません。突然変異というのは、ある意味で遺伝子コピーのエラー、失敗ですが、それが進化に役立つことがあります。
失敗は避けたいのは当たり前です。
失敗して、自分が低く評価されたり、怒られたりするのは嫌ですし、
自分をかっこよく見せたい、大きく見せたいと思えば、
失敗しない人であろうとして、失敗を隠そうとすることも起こるでしょう。
組織の中では仕事の成果に対して給料が払われます。
失敗ばかりしている人よりも、成果を出している人の方が高く評価される。
給料が下がるのではないか・・・という怖れで失敗を隠したくなる、
ということもあるかも知れません。
しかし、失敗を隠さず、オープンにしてゆくことが組織として学び、進化していくためには、とても大事。隠ぺい体質では進化できないのです。
また、突然変異的考え方からすると、
一見くだらないことや、「それって現実的じゃないよね」ということを
組織の中で言い出しやすいようにしておくことも大事です。
次の世代を作っていく、良い一つの遺伝子になります。
3.行動量、コミュニケーション量
たくさんの混ざり合いを起こしたり、
たくさんの失敗の受け入れ合いを重ねていくためには、
行動やコミュニケーションの量が多くないとなりません。
どんどんトライアンドエラーを繰り返していく事で
最適解に近づいて行けます。
行動する前に膨大な時間をかけて完璧なプランを作っても、いざ実際に行動してみたら失敗・・・という結果になりかねません。
未知の課題に臨むときは完璧なプランを立てようとするよりも、
最初からああでもない、こうでもないとどんどん行動していく
行動量が多いチームの方が、結果としてより良い成果を上げる確率が高くなります。
こうすると失敗する、こうするとうまくいく、というのがすぐにわかるからです。
これは、行動量が多くないと生まれてきません。
これまで話してきた「混ざり合い」や「失敗」によって
組織は進化・成長をしていく訳ですが、
「混ざり合い」によってたくさんの遺伝子を混じり合わせたり、
「失敗」によって生まれた突然変異種を進化させたりするためには
「世代交代」をたくさんやっていく必要があります。
自然界でいう「世代交代」をたくさん起こすことにあたるのが、
行動量やコミュニケーション量です。
たくさん行動した方が、より早く次の世代が生まれる。
行動した結果こうだったから、次はこうしていこうというのが、次世代。
コミュニケーション量が多いことは、より多くの交叉交配を起こします。
もちろんその中では、衝突や失敗もありますが、
それをたくさんたくさん重ねていくことによって、学び、進化していくことができます。
だから量が大事であるということになります。
4.リフレクション
たくさん行動を重ねたり、失敗を重ねても、同じことを繰り返していくだけでは進化は起きません。
やってみた後、「こうだったから、次はこうしていこう」とリフレクションを行うことで、
次の世代のアイデアが生まれてきたり、行動が生まれてきたりします。
リフレクションは組織として学び、成長してゆくことの要です。行動、経験を振り返り、その意味を確認することが学びとなります。そこで経験を次の行動に活かして行くことが出来るのです。
最後に
「たくさん行動した方がいい」とか、
「関わり掛けたり、混ざり合ったりした方がいい」とよく言われます。
結局それは何のためかというと、
チームが一つの生き物のようにつながり合って、学び合い、進化していくためです。
組織として学び、進化するための行動であり、混ざり合いなのです。
組織として学び、進化し続けなければ、
情報や課題が非常に複雑化している中で、集団として結果を出し、生き延びていくことはできません。
何をしたら一番良い結果が出るのか、誰も知らないし、わからない。
技術もどんどん進歩しているし、今後どう進化していくのかもわからない。
こういう時代だからこそ、
分わからないことに対して答えを出すためには、
組織として学び、進化していくということが必要なのです。