第50回『変態を支援するチームビルディング(5)ビジネスとボランティアの間で』
2017年02月23日
※今回の『変態を支援するチームビルディング(5)ビジネスとボランティアの間で』は、
「海外ビジネス武者修行プログラム」を運営されている
山口和也さん(株式会社旅武者 代表取締役)との対談です。
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山口和也(写真左、以下 和也さん)
将来どうしていきたいかというと、私はコミュニティがみんなの人生に一番インパクトを与える要素なのではないかなと思っているので、コミュニティの設立・維持に時間を使いたいと考えています。
コミュニティ、つまりどういう人たちと付き合っているかという集まりですよね。ウィークタイズ(弱い紐帯)の話です。社会的なつながりが緊密な人よりも、社会的なつながりが弱い人のほうがより有益な情報をもたらしてくれる可能性が高い。
まさにその通りで、自分が起業したときに役立ったのはコミュニティでした。
いろんなコミュニティに、「こんな人いない?」と投げかけるとみんな返してくれるんですよ。
たぶんじんさんも同じだと思うんだけど、自分で会社をやっている人ってつながりがないと生きていけないと思うんですよね。そこらへんのつながりって、そんなに頻繁に会うわけじゃないんですよ。半年に1回とか、1年に1回とか。Facebookでつながっているだけで、たまに向こうから連絡が来るとか。
そんなようなつながりが、一番有用なんです。なぜなら、自分と違う生活をしているし、違う価値観を持っているから。それで、武者修行って違う価値観を持った人が集まるんですよ。ビジネス研修と言っているけれども、集まる人には3つの属性があります。ビジネス属性、海外属性、自己変革属性。
ぜんぜん違う価値観を持った人が強いつながりを持つ。だから、武者修行コミュニティはいい。10年、15年後に最強になるんじゃないかと思っているんですよ。違う価値観を持った人が15日間で本当に仲良くなるじゃないですか。
それで、コミュニティがただあればいいわけじゃなくて、“いいコミュニティ”の条件というのがまず最低でも2つあります。
1つ目は、入口がある程度スクリーニング(ふるいわけ)されていること。昔、あるSNSをやっていたときにいろんなコミュニティを見たんですけども、一番機能していたコミュニティの一つががダイビングのコミュニティでした。ダイビングやる人ってその時点である程度スクリーニングされているんですよね。
2つ目は、本音を話せる度合いが高いということ。その会に行ったときに。たんに昔話楽しいというよりも、ぎりぎりまで深い話ができたほうが満足度高いじゃないですか。たまにしか合わないんだけど深い話ができるということが、すごく大事だと思います。
いいコミュニティは、この2つの要件を満たす必要があると思うんですよね。この2つの要件を維持し続けると、どんなことが起こるか。起業メンバー探しとか、新規ビジネスや企画のヒントとか、転職紹介。ウィークタイズ(弱い紐帯)を提唱しているマーク・グラノヴェッター博士によると、転職紹介の6割は近しい人ではなく、たまにしか合わない人(=ウィークタイズ)から生まれるそうです。
こういったものがすべてコミュニティから生まれてきています。良質なコミュニティに自分が所属していて、それをうまく継続させていくとその人の人生にすごく大きなインパクトがあると思うんですよ。
そういった面で、武者修行のコミュニティとファシリテーターのコミュニティをすごく大切にしたいなと思っていて、いま一番考えているし、一番時間を使っています。
また、武者修行はめちゃくちゃ利益率が低いので、チームビルディング研修とかプレゼンテーション講習とか、あるいは転職紹介みたいなことも、今後はコミュニティで提供していくかもしれません。
その時は、両方にとってウィンウィンな関係をちゃんと構築することが大切だと思っています。
河村甚(写真右、以下 じん)
まあね。ウィンウィンなのがビジネスだからね。なるほどね! コミュニティがちゃんと育っていくっていうことが、参加しているみなさんの将来的な価値も高めていくし、旅武者としてもそれが理想ですよね。
和也さん
それでいろいろやっているわけですが、第1回同窓会「変態超会議」。1年に1回定期開催していきたと考えています。もう1回は運動会みたいなことをやろうかとも考えています。ターム対抗戦でもいいし。たとえば、チャンバラとか。
ポイントは、人脈で呼ぶのでなく、コンテンツで来てもらえるようにすること。「俺が誘ってるんだから行こうぜ」というような集客をやっていると、2回目、3回目は続かないわけですよ。
「行ってよかった、面白かったからまた行こう」という単純なコンテンツの面白さとか魅力で呼べるようにするのが、コミュニティをつくる秘訣のひとつかな。
じん
そうですね。あと、あれだけの数が集まって、そこで初めて新しい人と会った価値みたいなのが残る。こないだの変態超会議では、外部の会社を入れて、謎解きゲームみたいなことをやったじゃないですか。
なんかねえ、変態超会議もっとぐっと入れると思う。初めて会った人との関係性。人数がすごく多かったから難しさもあるけど。それで、関係性をつくるためにいろんな仕込みがあったし。とても良かったんだけど、もっとできるかな。
和也さん
まじすか……。どんな感じ?
じん
まずね、いいんだけど、まずは人数が多すぎた。アクティビティは少人数だったんだけど、それをやったらおしまいになってしまった。そのあともっとお互いの事を知る話ができるようにするとかね。ワールドカフェ的なことも可能性あるかなぁ。
楽しいイベントっていう意味では、あれでいいのかもね。もしかしたら目的別なのかもしれないね。それこそ半年に1回の大イベントはやりつつ、目的別のコアな活動ができるような環境づくりの支援ができると良いのかな。
和也さん
あ、それはやっているんですよ。いまの大イベントとは別に、それぞれの小コミュニティがあるんですよ。今やろうとしていることを本音で言ってしまうと、1つはコミュニティリーダー研修をやろうと思っています。
もう1つは……、私コミュニティで成功していることってあまりないと思っているんですよ。
じん
コミュニティで成功しているっていうと…?
和也さん
たとえば、うまく維持できているとか、うまく価値を出し続けているとかってあんまりないんじゃないかなと思っていて、コミュニティの成功の秘訣って、私の中の仮説では、ビジネスの組織マネジメントとボランティアの組織マネジメントの間にあると思っているんですよ。ちょうど中間じゃないかなと。
じん
というと?
和也さん
つまり、モチベーションだけで維持できない、コミュニティは。かといって、人事権があるわけではない。
だから、ハーズバーグの動機づけ衛生理論の「衛生要因」を満たす、つまり、モチベーションを持っているコミュニティリーダーに対して少額でも報酬を払ったらどうかと思っているんですよ。そうすると、その人の最低限のコミットが生じる。かつ、その人のモチベーションとコミュニティ維持できる。
そういうことを少しずつ試してみたいなと思っていて、そういうことやっているとこはあんまりなくて……。
じん
面白いね! インターンの仕組みと近い感じですか?
和也さん
応用ですね。自分がやりたいことをやっていて、定期的に会を開いて、報酬をもらえる。ほんの少しですが・・・。
ビジネスとボランティアの両方の折衷案なんですよね。”ふんばろう東日本支援プロジェクト”というのがあるんですけど、それを立ち上げた早稲田の西城先生の授業を受けている時に「ボランティア組織って会社とはぜんぜん違うんだ」ってことを学んだ経験が活きています。
じん
そこでみた一番の違いってなんですか?
和也さん
みんなお金に繋がっていないので、基本的に手を挙げた人にやらせるわけですよね。でも、その人のスキルがなかったらやらせないということもあるんですよ。あと、すごい頑張ってる人には「交通費出そうか」とか言ったりするわけですよね。
つまり、みんなのコミットとかモチベーションがすごくバラバラなので、強制力を働かせるわけにはいかず、モチベーションマネジメントのほうにウェイトをかけるわけですよ。
こういう震災系のボランティア団体のゴールは”自分たちが居なくなること”なんですよ。”自分が解散すること”がゴール。
会社とはちょっと違いますよね。なるほどと。じゃないと依存してしまう人が出てくるからって言っていました。「助けてくれてありがとう」って言われているのが気持ちよくて、ずっと続けてしまう。
モチベーションマネジメントっていうところで、人はお金だけではやらないし、モチベーションだけでもやらないと。その間にあるところってどうなんだろうっていますごく深く考え中。まだ考え中だから、結論出てないんですけど。
じん
それに近いところで思うのが、チームとコミュニティっていうのがチームビルディングをやっているとつねに考えざるを得ないところにあります。
”チーム”は、明確なゴールに向けて全員がそこに思いをひとつにコミットしてやりきる。そういう組織。”コミュニティ”っていうのは、どちらかというと関係性、メンテナンス重視。チームはパフォーマンス重視。
そういう切り口で、どんな組織もチームとコミュニティの両方の面を持っている。
さっきの話で言うと、面白いことにボランティアの組織のほうがチームっぽい。つまり、明確なゴールがあって、それを成し遂げたら終了、解散みたいなね。
企業の場合は、会社が存続していくっていうコミュニティ性みたいなものもすごく大事。なぜかっていうと、企業に所属している一人ひとりが生活かかっているし、潰れちゃ困るから。だけど、仕事の一つひとつに明確なゴールを置いて、成し遂げていくっていうのも大事。
企業はコミュニティ性が高い。だけども、結果結果みたいな感じで数字ばっかり追いかけていると、コミュニティ性をおざなりにしてしまう。だから、最近”チーム”だとか”関係性”といったことが言われているんだと思います。
そういう観点で考えたときに、コミュニティで大事なのは集団維持のメンテナンス要素だなと。イベントを打つということよりも、「◯◯さん頑張っているね、大丈夫」と、この人どうかなというところに気遣うとか。みんなのことを気にしているおせっかいおばちゃんがいるとか、そんなことがコミュニティの維持とかメンテナンスには有効な気がしています。
ゴールを達成するって意味だと、コミュニティを育成するリーダーにゴールを設定して報酬っていうのもアリじゃないかなと思います。
和也さん
私は武者修行コミュニティの皆に「コミュニティというのは会い続けることが一番大事」っていつも言っているんですよ。
コミュニティも毎月開催し続けます。その代わり、ゴールと全体像を伝えるために研修をしようと思っているんですよ。そのコミュニティの目指すところ、毎月のミーティングのゴールをちゃんと設定して、自分たちのものにする。そういうことを毎回毎回やってもらおうと思っています。
逆にそれぐらいシンプルでいいと思っているんですよ。それ以上決めるとモチベーションのほうが下がるから。管理されている感が出て。
後は、いやらしいって思う人がいるかもしれないけど、ベーションを上げて会を開催する。それに見合ったリターンがあるかっていうふうに、設計することが大切なのかな・・・と。
じん
当然もらっていいことだと思うし、それが仕事でもいいかなと思うしね。
和也さん
こう言っちゃなんっだけど、ビジネス的にその報酬をどう回収するかっていうと、コミュニティの参加者にプレゼン塾とかにも参加してもらえれば、ペイするんじゃないかなと思っています。リアルに集まっている場で、「今度こんなことやります」と直接告知する。
じん
広告費としては、すごい効率高そうだよね。
和也さん
っていう仕組みを作ったら、超面白いんじゃないかな……。
武者修行コミュニティのみんなが壁を乗り越えるためツールを維持する仕組みをどうしようかなと考えて出てきました。みんな、会い続けることで価値も増大していくと。
じん
かなりのストックビジネスですよね。
和也さん
そうなります。我われもそうだし、我われ以上に参加者の得るメリットが大きくなると思います。
じん
本当に参加者にとってメリットが大きいことだと思うし、かつそれで会社としても事業が回っていくっていうことで、一番いいことだよね。参加者がハッピーだけど、運営者がやるごとに疲弊していくと続かないからね。
和也さん
そういうことですね。