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第26回『アスリート育成とチームビルディング(4)主体性と目標』

2016年03月24日

チームビルディングの話をしよう
※2015年4月から始まった連載コラム「チームビルディングの話をしよう」では、代表河村がチームビルディングを切り口にさまざまなテーマでいろいろな人と話し合った内容お届けいたします。

※今回の『アスリート育成とチームビルディング(4)主体性と目標』は、
第23回『アスリート育成とチームビルディング(1)生きる力
第24回『アスリート育成とチームビルディング(2)親はどう育てる?
第25回『アスリート育成とチームビルディング(3)企業のチームビルディングとの違い

の続きとなります。
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相馬浩隆さん(以下ヒロさん)
最近一般企業の研修なんかもやるようになって、チームビルディングだけではなく新人、2年目の研修なんかもやるんですけども、そこでは目標達成行動ができるようにしてほしいというのを依頼されるんですよ。目標を定めて、その為に何が必要なのかを考えるっていう事と、自分がどこまで到達しているのか俯瞰して、自分がこれからすべきことを確認するとか。そういういわばPDCAのようなことを自覚的に、そして主体的に出来るようになってもらおうというプログラムがあるんですね。
それってスポーツ選手が日ごろやっていることと近いんです。少なくともトップアスリートたちはそういうことをやっています。企業でもこれと同じような事が求められているんだと思います。

 

河村甚(以下じん)
そうですよね。そういう事で困っているという企業は多いでしょうね。

 

ヒロさん
特に2年目社員の研修では、主体性を持って仕事をするみたいなことも求められるんですが、そもそも日本のこれまでの教育の中では、そういうことを重視してこなかったと思うんですよね。どちらかといえば、だまって先生の言うことを聞くのがよい生徒だとされた。2年目社員の中には、突然そんなことを求められて戸惑う方も少なくないです。
しかしスポーツ選手の中には、主体性をもってPDCAサイクルを回している人が多いんです。ただそのことが一種のスキルであって、社会でも通用するものだと選手自身が気づいているかっていうと、そこはちょっと課題があるんですけども。

 

じん
自分で考えて、自分で整理して、それを実現するための行動に移すところまで、もっと言えば自分で結果を出すところまで主体的に行うことができるっていうことですよね。

 

ヒロさん
そのためにはその手前で「何で自分はこれをやっているのか」っていうね、そこを突き詰めていく必要があると思うんです。トップレベルになればなるほど練習も厳しいし、他のいろいろなものを犠牲にしなきゃいけないので、そこがよく出来ている人が生き残っていくんだろうと思うんですね。

 

じん
なるほど。なんかそこらへんって興味があるんですけれどもスポーツって「チームのため」とか、トップダウンで階層があって先輩の言うことは絶対というか、そういう中で「言われたことをひたすらやる」「文句を言わずにやる」「自分がどうかじゃなくてチームのためにやる」とかね、そういうステレオタイプってあるかもしれない。そういうところと今ヒロさんが話していた主体性みたいなところってどういう関係にあるんですかね?

 

ヒロさん
おっしゃるように特に団体競技なんかの場合は目標を与えられるというところはあると思うんですよね。「このチームに入った以上ここを目指すんだぞ」みたいなものはあると思うんです。その中でも「自分なりにここだけはこだわっていくんだ」とか、「チームの目標に合わせるためには自分はここを磨かなくちゃいけないんだ」とか自分なりの自分事にできる目標を設定していると感じますね。

 

じん
つまりチームとしてこうだと言われても「それは分かった」と受け止めて「その目標は自分にとってこういう意義がある」とか「自分は何でその目標に向かいたいのか」だとか、チームとしての理由だけじゃなく、自分としての理由が自分が持てているっていうことですか?

 

ヒロさん
そう思います。伝統校や常勝チームを思い浮かべるとわかりやすいですが、そのようなチームでは、目標を達成するとそのチームや選手はどうなる、という具体例を目の当たりにしますよね。充実感にまみれた選手の顔や、応援している家族や仲間の笑顔や、ナショナルチームのメンバーに選ばれるなど進路が開けたりする事実を見ているわけです。だからまずはチームメンバーとして貢献したいという気持ちが強くあって、それ以外の自分にとっての意義も、後輩や新人は見つけやすいんだと思いますね。
目標が自分ごとになっていれば、全体練習だけでなく個を磨く練習に身がはいりますよね。そこは練習方法まで自分で考えるようになります。そうやってまた、チームは強くなるわけです。

 

じん
なるほどね。そこまで自分で考えると。

 

ヒロさん
まあそこまで与えてくれる指導者の方もいらっしゃると思いますけど、やっぱり自分ごとになっていないとだんだんと厳しくなってくると思うんですよね。趣味でやっているのと違って、自分なりの価値観や方法論を持っていないと燃え尽きちゃうと思うんです。最近は1?10まで教えるというよりも、指示することは1か2くらいで、あとは自分で考えさせるという指導者も出てきましたよね。

 

じん
そうするとやっている事の意味も変わってきますよね。「言われたからやる」じゃなくて「自分がこう思うからやる」ということになるわけですね。

 

ヒロさん
そうですね。「こうなりたい」っていう姿があって、そのためにはこれが必要だと考えて、それに向かって自分で行動していく。そっちへ意識を変えさせることが指導者の重要な役割のひとつだと思います。あれこれ指示してやらせるのと違って、意識を変えさせることは難しいですよね。だからそれを大切だと感じている指導者の方々は、言葉の使い方や伝えるタイミングなど、伝わる伝え方をよく研究されてますね。

 

じん
なるほど、指導方法がそうなってきているんですね。昔って日本は特にそうではなかったと思うんですけれど、近年変わって来たという感じなんですかね?

 

ヒロさん
やっぱりスポーツでは日本は先進国ではないので、アメリカやオーストラリアなどのスポーツ先進国から学ぶことが多いと思うんですけれども、そういった国では効率の良い成果につながる指導方法はどうあるべきかってことがかなり研究されてきているので、そういうところからの影響もあると思います。
もちろん日本人に合ったやり方にしなきゃいけないので、海外のモデルをそのまま持ってきても役に立たないと思うんですけれども、そこのアレンジを上手にされているんだと思います。

 

じん
すごく良くわかります。チームビルディングもそうですね。アメリカなんかでやっていたのを日本人相手にただ同じようにやってもうまく行かない。
その今変わってきている選手育成の方向性というのは我々が企業のチームビルディングでやっていることと非常に近いと感じますね。基本我々が先生となって教えるよりも、いかに考えてもらうかを大事にしてる。そして自分たちの選択を見つけてもらう。そのために我々がどう係るかというところが大事なんです。アスリート育成もそうかと聞くと納得ですね。

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