第36回『心理的安全性の欠如が引き起こした悲劇のバーベキュー事故』
2024年07月25日
なぜチームビルディングが必要なのか
チームビルディングは、メンバー同士の信頼を築き、協力し合う力を養うことを目的としています。これにより、各メンバーが自分の意見を自由に表現できる環境が生まれ、組織全体の創造性と問題解決能力が向上します。
チームがうまく機能することで、組織全体のパフォーマンスが向上し、従業員の満足度や生産性も高まります。しかし、チームビルディングの重要性はそれだけではありません。チームビルディングがなされていない場合、組織は深刻な問題を抱えることになります。最近ニュースになった悲しい事故は、その典型的な例です。
事例紹介『ピラミッド型組織の悲劇』
今月7月4日に、ある美容専門学校のバーベキューで4人が死傷するという痛ましい事故についての第三者委員会による調査報告書が公開され、組織のピラミッド型構造がもたらした悲劇が明らかになりました。
この組織は心理的安全性が低く、理事長の一言が絶対であり、誰も異論を唱えることができない状態でした。
事件の発端は、理事長が火おこしのために消毒用アルコールの使用を発案・実行したことでした。複数の職員がそれに対して危ないと感じましたが、反対意見を述べることはありませんでした。結果的に、職員の一人が火力を強めるため約1リットルのアルコールをコンロに注いだことにより火が燃え上がり、男子学生が亡くなるという悲劇が起きました。この職員は後に「早く火をつけないと迷惑をかける。理事長から怒られるのが嫌だった」と説明しました。理事長は以前からこの職員を集中的に叱責しており、職員はその恐怖から指示に従わざるを得ませんでした。
第三者委員会はこの事件について、「理事長の長年にわたる強権的な経営が職員の間に『理事長に服従するしかない』という雰囲気を蔓延させた」と指摘しています。
理事長はキャンプのエキスパートではなく、消毒用アルコールを使った火の扱いについても十分な知識を持っていませんでした。それにもかかわらず、職員たちは理事長の指示に従わざるを得なかったのです。このような状況は、ピラミッド型組織の頂点に立つ人物の判断が間違っていた場合に、組織全体が危険にさらされることを示しています。
ピラミッド型組織の限界
この事件は、ピラミッド型組織の脆弱性を如実に示しています。上司の顔色をうかがい、怒られる恐怖から行動を選択するという文化は、組織全体のリスクを高めます。航空機事故や医療事故も同様の理由で発生することがあります。上司が正しい知識を持っていない場合、その指示に従うことが致命的な結果を招くのです。
特に心理的安全性が低い組織では、従業員が意見を述べることが困難になり、重要な問題が見過ごされることが多くなります。このような環境では、従業員が恐怖心から上司の指示に盲目的に従う傾向が強まり、組織全体の安全性が損なわれるのです。
チームビルディングの必要性
チームビルディングは、単にチームを良くするためだけでなく、このような悲しい事故が発生しないようにするためにも重要です。組織の構造を見直し、心理的安全性を高め、全員が意見を述べられる環境を整えることが不可欠です。
この事故を防ぐためには、理事長だけでなく、全職員が安全に関する知識を共有し、互いに指摘し合える文化が必要でした。日常業務においても、メンバー同士が信頼し合い、協力し合うことで、組織全体のパフォーマンスが向上し、予期せぬ問題に対処する能力が高まります。
チームビルディングは、組織の成功を支える重要な要素です。全員が意見を述べ、互いにサポートし合う環境を築くことで、組織全体のリスクを低減し、事故を防ぐことにもつながります。組織のリーダーは、自分自身の限界を認識し、チーム全体の知識と経験を活かすことが求められます。このような姿勢が、組織全体の安全性と成功を支えるのです。