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第3回『逆効果だった!?あなたの会社でイノベーションが起こらない理由』

2023年03月23日

不確実性の高い時代を切り拓き、正解のない課題に対して最適解を導き出していくには
多様な視点をフラットに掛け合わせ、イノベーションを起こすことが求められます。
これからの時代は、ノベーション人材が必要だと語られています。

イノベーションを起こすには天才的な個人に依存するのではなく、集団で取り組む方が有効であることが分かっています。そして、そのために必要とされるのが「多様性(ダイバーシティ)」です。
今回は、イノベーションとチームの面白い研究データをご紹介しましょう。

「ダイバーシティ」についてフォーチュン 500企業がどのようなメッセージ発信をしているのかについて調査したところ、興味深い結果が得られました(2022年)。
この研究では、企業が以下のどちらのスタンスでダイバーシティについてメッセージを発信しているのかについて調査しました。

一つめは、「イノベーションは我々のビジネスにとって欠かせないものである。だからダイバーシティを推進している」というビジネス上の理由を伝えるメッセージ、
もう一つは、「人は本来、人として尊重されるべきであるから、ダイバーシティが大切である」という、公平性や平等性を大切にしたメッセージです。

結果は、「イノベーションやビジネスのため」と発信している企業が、全体の80%を占め、
「公平性のため」と発信している企業は5%、残りの15%は特に理由を述べていない企業でした。

つまり、フォーチュン 500のほとんどの企業が、ビジネス上の理由を掲げていたということです。

多様な人材がフラットな関係性でチームとして協働することによって、チームの力でイノベーションを起こすことができることは、様々な研究によって明らかになっています。「イノベーションを起こすためにダイバーシティが必要である」という説明自体は間違っていません。

さらにここで、2種類の異なるメッセージを発信する企業のどちらに高い帰属意識(エンゲージメント)を感じるかということ調査しました。

①ビジネス上の理由を掲げる企業
②人として平等性、公平性を掲げる企業
③理由を示してない企業

①~③のどの会社に、より帰属意識を感じるかを調べたところ、面白い結果が出ました。

「①ビジネス上の理由」を掲げた企業は「②公平性のため」と掲げている企業より11%もメンバーの帰属意識が低いということが分かったのです。

さらに興味深いのは、③の特に理由を掲げない企業の方が、①のビジネス上の理由を掲げている企業よりも帰属意識が27%も高い結果になっていたのです。

これは非常に興味深い調査結果です。企業が「多様な人材を集めてイノベーションを起こそう」と正直に発信したところ、むしろ多様な人材が集まりにくいメッセージ発信になってしまっているということなのです。

なぜそのようなことが起こるのでしょうか。
それは、あるがままの自分自身が求められているのではなく、ビジネスのパーツとして、例えば「黒人」「女性」が求められているだけなのだ、と捉えられてしまうからです。
「自分らしさが認められているわけではない」と思われてしまうことによって、結果的にエンゲージメントが下がってしまうのです。

つい我々は「それがなぜ必要なのか」を説明したくなりますが、何のための多様性かということを説明すればするほど逆効果になってしまいます。もちろん、投資家に対してきちんと説明をしなくてはならないという背景などはあるでしょう。

環境が安定的で変化が少ない時代には、多様な人材のチームではビジネスのスピードに遅れが出るから価値観の近い人を集めてスピード感をもって進めた方がいい、という考え方もあり、なぜ多様性が大切なのかをビジネス上の理由と付けて説明しなくてはなりませんでした。

しかし、変化が激しく不確実性の高い時代になった今は、その考え方は通用しなくなっています。多様性はすでに必要不可欠なものなのです。

日本はアメリカほど多様性が進んでおらず、今はまだ人種やLGBT+、ジェンダーなどの問題が隠れている状態ですが、いずれ日本も同じことが起こるでしょう。そのとき、「我々はイノベーション企業だから多様性を尊重します」と発信すると、帰属意識が下がってしまいます。

「イノベーションを起こすために多様性が必要」だと発信するのではなく、もはやあたり前の価値観のひとつとして「ダイバーシティは大切だから大切である」という姿勢でいることが、本当にイノベーションを起こす組織になることができます。

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