第99回『自分の意見を発信するという事』
2011年05月12日
「部下にもっと自分の意見、考えを発信してほしいと思っているのに、なかなか声が上がってこない」という悩みは良く聞きます。「もっと声が上がる場作りが必要だ」「発言しないのは考えを深めている途中かもしれないので無理に促さないほうがいい」などといった事が言われますが、もっと根本のところから理解することでより意味のある改善に繋げる事が出来ます。
まず始めに「なぜ自分は彼等に発信してほしいと思っているのか?」という問いから始めてみましょう。
「意見が出ないと会議が進まないから」「何を考えているのか分からないとどう対処していいのか分からないから」などなど、色々な理由があると思います。チームビルディングを深めて行くための視点から考えると、チームメンバーが意見や考えを発信するという事はその人の価値を発揮していると捉えられます。(もちろん発信していないからと言って価値を発揮していないわけではありませんが)
人の「意見」とは何でしょうか?それは単にそこにある事実を横流しする事ではなく、自分のフィルターを通して発信することです。例えば、そこにイスがあったとすると「イスがあります」ではほぼ事実の横流しで大きな付加価値は付いていません。しかし「とてもセンスのいいイスがあって、あれをうちのオフィスにも置いたら素敵なオフィスになりそうです」と伝えたり、「本屋さんにイスが置いてあって、立ち読みならぬ座り読みを促している仕組みは売上にどんな影響を与えるんだろうか?」と問いかけたりする事によって、その人のフィルターを通した価値が付きます。
事実の横流しではなく、自分のフィルターを通す事が付加価値を付ける事になるのです。
また、発信をする事で自分の捉え方を整理できる事も大きな価値です。発信をする為にはどう捉えているかを理解していなければなりません。しかし、多くの場合に言葉などで発信するまでは自分の捉え方も固定していないのです。自分の捉え方が確定された時に発信するということもありますが、発信しているうちに自分の捉え方が定まって来るという効果もあります。
しかし、意見や考えの発信が起こりにくい場もあります。誰も発言しない会議を経験した事があるでしょうか? 全員が待ちの姿勢で、口火を切りにくい状態です。発信しにくいと思うのにも色々な理由があり得ますが、良くあるのは発信する事で自分が否定される事を恐れるということです。事実の横流しは自分の意見がのっていないので否定されたとしても自分が否定された事にはならず、事実が否定されただけです。自分の意見をのせた発言は否定された時に自分が否定されたと捉えられ、恐いと感じてしまいます。
- まずチームにとって大事な事、その目的や目標をメンバー全員で共有する。
そこに集まるメンバー全員が横並びでいる事が暗に望まれている場では個性を発揮すると否定されるのではないかと恐くなります。他の人と違う意見を出すよりは誰かの意見に同調する方が安全だと感じるのです。
それから、意見を発信しても聞いてもらえない、圧倒的な指導者の考えを聞くまでは自分から発信する事は出来ないと感じてしまう場合もあります。
このような時には、自分のフィルターを通して発信することの意味を再確認する必要があります。 - チームの中での個人の思いや目標をあげる。
どんな人も一人一人固有の物事の捉え方を持っていて、それを通じて事実を表現して行くことがその人の価値を生み出す事になります。
「なぜ自分は彼等に発信してほしいと思っているのか?」という問いの答えをまず自分が知ることからチームも変わってゆきます。 - 個人の目標がどのようにチームの目的や目標にかなっているのか?を関連づけて説明する。