第95回『起こった事、感じた事を忘れずにその意味を考える 』
2011年03月17日
「行動する事」と「考える事」は自分にとって、とても大事な人生の指針です。考えているだけではなく、言葉だけでもなく行動して形にすること。そして受け取ったあらゆる情報や体験をそのまま鵜呑みにするのではなく、しっかりと考え、複合的に考え、理解を深めることを大事にしています。そして常にこれを繰り返し続けます。
今、東日本が大きな災害に見舞われています。地震のあった当日は東京もただごとではない状態でした。何らかの被害にあった皆さんはそこで何を感じたでしょうか?何が起こったでしょうか?この災害で私たちは大きなものを失っています。ですから何事もなかったかの様に日常に戻ってしまうのではなく、失ったものと引き換えに得たものに目を向け、大事にして行かなければなりません。
この時に自分が感じたのは人とのつながりがいかに人にとって大事なものであるかを実感しました。状況把握が出来ない中、回りに居る人たち同士助け合ったり、お互いに対してとても優しくなったりする場面を目にしました。人と人とが自然につながり合おう、関係をつなごうとするのです。なんとか危機を脱しようという同じゴールを共有した時には、たとえ仲が悪い者同士でも、一瞬で結束し、助け合います。
チームビルディングで現状認識とゴールの共有が大事だというのはまさにこのことです。いまある状態から何が何でも成し遂げなければならないゴールを共有したときにはくだらないしがらみも対立も何も関係なく、始めて会った人でも言葉の通じない相手でも関係なくチームになります。チームの関係性を良くするのがチームビルディングではなく、チームビルディングの結果、メンバー同士の関係性が良くなるのです。
災害時には危機的状況から何とか安全を確保しようという共通のゴールが生まれます。そしてお互いにそれが共通のゴールである事を知っています。平時のチームでも全く同じ事です。なんとしても成し遂げる共通のゴールを持っていて、お互いがそれに本気で向かっている事を知っている。チームはそういう状態の時に生まれます。難しいのは、「この危機を共有している者同士、なんとかして安全を確保しよう」と言うほどの目的意識と認識共有が普段はなかなか作りにくいのです。
人は孤立無援では生きて行けません。集団で社会を形成し、支え合いながら生きて行く生き物です。完全に一個体として存続して行く事はできません。本来、人はチームとなり、支え合う様にできています。しかし、高度に仕組みが整った社会では人の集まりで作られた仕組みに支えられているのにそれに気づきません。たとえば、誰とも話をしなくとも、食べ物が手に入ったり、住む場所が手に入ったりしてしまうのです。人が作った仕組みに支えられていることも忘れて、自分が人を支えている事も忘れて、そうすると感謝もしないし感謝もされない人になってしまいます。
日本が直面するこの大きな災害を教訓として受け止め、お互いがお互いを尊重しあう社会に生まれ変わって行かなくてはなりません。政治家のせいにするのではなく、世の中のせいにするのでもなく、私たち一人一人が社会に対して責任を持つべきです。社会はそこにもともと存在するものではなく、私たち一人一人の集まりが社会を構成しています。政治家も元々政治家だったわけではなく、私たち一人一人が選んで政治家が生まれます。
世の中はすべて私たち次第で変わります。そのためには私たち一人一人がしっかりと「考える」、そしてしっかりと「行動する」事が必要です。もしこの災害のなかで支え合う事や人とのつながりの大切さを感じたら、そこで感じたものをぜひ覚えておいて下さい。その時の感情を覚えておいて下さい。
この大災害で起こった事、感じた事を忘れずに、その意味を考え、更に深く考えることで、私たちは私たち自身と社会の在り方をより良くして行けるはずです。