第45回『チームのベクトルを合わせることとゴールを共有すること』
2009年04月16日
チームマネジメントにおいて、チーム一丸となるために「チームのベクトル合わせが必要だ」「チームで共有するゴールが必要だ」などと言われます。このベクトルとゴール、とても似ているようで、その機能は大きく違います。
図で描くと分かりやすいですが、ベクトルは向かう方向を示し、ゴールは目指す一点を示しています。組織にとっての存在意義がベクトルで、これは常にその方向に進み続け、組織が存在する限り止まることはありません。組織がつねにその方向に向いているのです。
それに代わってゴールは未来のある一点を示しています。ベクトルとは違い、そのゴールを達成したら終了です。
チームはベクトルだけでは動きません。ベクトルは方向性を示しますが、具体的に「いつどこにたどり着くのか?」という一点を示していません。チームにはこの明確な一点を示すゴールが必要です。旅に例えれば東京から出発して札幌へ行くのか博多へ行くのかが分かっていることで、そこへ行くためにどのように行動すれば良いのかが分かります。そしてもちろんこのゴールへ向かうベクトルが存在します。ゴールとベクトルは入れ子構造になっていて、ゴールへ向かうベクトルの中にはいくつもの小さなゴールが存在するのです。
「チームのベクトルを合わせること」や「ゴールを共有すること」はリーダー/マネージャーがなすべき重要な仕事です。しかし難しい所は「ベクトルを作ること」と「ベクトルを合わせること」は大きく違い、また「ゴールを設定すること」と「ゴールを共有すること」は大きく違うということです。
優れたリーダー/マネジャーは、このベクトルとゴールを巧みに活かしてメンバーが最高の成果を挙げられる場を用意します。
【ベクトルの使い方】
多くの場合、組織の方向性、存在意義である大きなベクトルはもともとその組織の文化として存在しています。ベクトルがあることでその文化、方向性、考え方を魅力的だと考えるメンバーが集まってきます。自分たちがどちらを向いているのかを示す事が重要です。
ゴールを達成した後も存続してゆく組織はこの大きなベクトルの中にまた次のゴールを見出し、存続してゆきます。
【ゴールの使い方】
ゴールをリーダー/マネージャーが示すことと、メンバーが設定することのどちらが良いのかが良く議論されます。これはどちらの方が良いというわけではありません。大事なのは、設定したゴールに対して夢中になって向かっていけるかどうかです。自分たちで設定したからといって本気になれるわけではありません。
人によっても詳細のゴールを与えてもらう事で本気になれる人と、責任を与えられて自分でゴールを設定することで本気になれる人とがいます。
リーダー/マネージャーは方法論にとらわれることなく、組織の置かれた状況やメンバーによって最適な方法を選択しなければなりません。