第30回『アイスブレイクなんて機能しない!?』
2008年09月18日
「アイスブレイクなんてお遊びみたいなこと、会社のワークショップじゃできないよ」だとか、「アイスブレイクやってみたけど逆に引かれちゃったよ」という話をよく聞きます。アイスブレイクとは、人が集まる場を和ませ、コミュニケーションをとりやすい雰囲気作りの事。そのためにゲームのようなアクティビティが多く使われていますが、これが機能しないのには理由があります。
まず一番の理由は、参加者の温度とアクティビティの温度が合っていないことです。アイスブレイクの目的はあくまで人が集まる場を和ませ、コミュニケーションをとりやすい雰囲気を作ること。しかし、ここでとても大事なのはスタートの時点で参加者がどういう状態にあるのかということです。初めて会った人同士なのか? 固いビジネスの関係なのか? カジュアルな話ができる関係なのか? 早朝ミーティングなのか? ランチ後なのか? そういった前提によってどんなことをすれば場を和ませ、コミュニケーションをとりやすい雰囲気が作れるのかは変わってきます。
そしてもう一つは、参加者がそのアイスブレイクを行う人に対しての甘えがあるケースです。たとえば、毎日顔を合わせている課長が突然社内会議で何か体を動かすゲームのようなことを始めてもまわりは「なんで課長がこんなことやっているの?」となってしまいます。(もちろん課長の個性にもよります)
アイスブレイクのために使われるアクティビティにはいろいろな種類がありますが、お互いの壁を取り払うためにわざと恥ずかしさを伴うようなことを行うものもあります。参加者が恥ずかしがる可能性のあるアクティビティは良く場を見て使わないと本当に逆効果になってしまいます。参加者の状態に合わせて設定することが必要です。
また、アイスブレイクをなぜ行うかの理由を説明するのも場合によって有効です。「アイスブレイクを行う前にアイスブレイクをやりますと言うのおかしい」と思われていることもありますが、必ずしもそんな事はありません。そこに集まったメンバーは目的があってその場に集まっています。アイスブレイクはその目的とは明らかに違うと思われることを行うので、その理由を説明しないと不安がられてしまいます。ですから「まずはお互い自由に意見が言い合える場を作るために簡単なグループワークを行います」などと言ってもいいですし、「アイスブレイクとは・・・」と言ってしまうのも場合によって有効です。それを言うことが場を和ませ、コミュニケーションをとりやすい雰囲気作りにつながるのであればどんどんやるべきです。
そしてもう一つ大事なのは、アイスブレイクをする必要がないときに行うのも逆効果になる原因になるということです。
アイスブレイクは通常ワークショップなどの一番最初に行われることが多いですが必ずしも一番最初に行うことがすべてではありません。休憩時間の後、再開するときに行うというケースも多くありますし、場の雰囲気が固くなってきたらそこでそれをほぐすようなアイスブレイクを使うことも多くあります。簡単な例ではたとえば長いスピーチが続いたあと、次に立ったスピーカーが参加者の息抜きのためにストレッチを促したりすることはよくあります。
こういった合間に入れるアイスブレイクは使い方によってはうまく流れを活性化させますが、うまく使わないと流れを遮ってしまう事もあります。たとえば、グループワークで話し合いが盛り上がっていたところへ休憩を入れたとしましょう。休憩後にアイスブレイクを入れるのは有効ですが、下手に使うと流れの中断になります。グループワークの話し合いが活性化していて休憩をとる場合には休憩中もまだ話し続けたり、ブレイク後も早く話に戻りたいという思いが強いはずです。そんな状態のときに本題に全く関係のないゲームをやっても逆効果になってしまうのです。もともとの目的はそのグループワークを活性化させることですから、すでに活性化した状態のところへわざわざ本題とちがうゲームのようなことをやってみても意味がありません。逆に中断されることによるフラストレーションをあおってしまいかねません。
そしてアイスブレイクと言うとイコール、ゲームのようなアクティビティと思ってしまいがちですが、必ずしもそうではありません。合間に休憩を入れることもアイスブレイクですし、参加者が眠くなってしまうようなセミナーの合間にストレッチを挟むこともそうです。今、参加者の状態がどうであるか、そしてその参加者にどういう状態でいてほしいのかを考えて行います。なにも進行表に「アイスブレイク」と入っているからと言って、必ずしもそれを行おうとしなくともいいのです。
(英語ではIce Break ではなくIce Breakerと言いますが、日本語として一般化しているため敢えて「アイスブレイク」と表記しました。)