第64回『マイナスからゼロを目指すのか? ゼロからプラスを目指すのか?』
2013年11月07日
チームはゴールを共有して進んで行くものですが、一言にゴールといっても様々なものがあります。それを分類する視点も様々なものがありますが、今回は「マイナスからゼロを目指すゴールか?」「ゼロからプラスを目指すゴールか?」といった視点で捉え、似ていながらも大きく異なるこの2種類のゴールについて考えてみたいと思います。
マイナスからゼロを目指すゴールとは、よくない状態をより正常な状態へと正して行くようなゴールです。例えば「赤字の会社をなんとか黒字にしよう」だとか、「残業時間を減らそう」だとか、「企業による搾取を無くそう」だとかいう類のものです。つまり現状が本来あるべき状態ではなく、それを「正しい状態」にして行こうというというものです。
ゼロからプラスを目指すゴールは現状に何か問題があるわけではないけれど、実現したいより素晴らしい状態を目指すものです。「世界一の○○を目指そう!」だとか、「売り上げで20%成長を目指そう!」だとかいうものです。安定している現状からさらに上を目指すものです。
どちらも上向きにより良い状態を目指すものではありますが、前者は呼吸のできない水面下から呼吸ができる水面を目指すようなものです。なんとかして成し遂げないといけないと全員が思い、上向きの浮力が働く目標です。後者は水面から上に飛び立って行くような目標です。水面を目指すのと大きく違うのは無限に広がる空のどの辺りを目指すのかを自由に決められます。しかし、自由に決められる分、どこを目指すのかの合意も難しく、そこに対する思いのブレもあります。
チームのゴールとしては全員が思いを一つにして共有していることが大切なのでマイナスからゼロを目指すゴールの方が一丸となりやすいということになります。しかしここにちょっとしたトリックがあります。水面下から呼吸ができる水面の「正しい状態」を目指すといっても、実際はその正しい状態の認識が人によって違うのです。「正しいこと」や「当たり前の常識」は固定された不変のものではなく、人によって、環境によって変わるものなのです。
これはつまり、ゼロからプラスを目指すゴールでも捉え方によってマイナスからゼロを目指すような浮力が働くゴールとなり得るということです。
「世界一の○○!」といったゴールでも、そうであることが当たり前で、「今の状態は本来あるべき状態ではない。早く本来あるべき世界一の○○にならなくては!」という捉え方をちが共有していればそれはマイナスからゼロを目指すゴールとなります。
どちらのゴールの方が良いというわけではありませんが、うまく使い、共有することが出来るとチームをより強く結束させ、前進させることが出来るはずです。