第62回『なぜ座学ではなく体験からチームビルディングしてゆくのか?』
2013年10月10日
あるチームで突然社内のメンバー入れ替えがありました。新しいメンバーと旧メンバーとは面識も無く、お互いに対する理解が少ない状態。疑念や不安もありそうです。継続的にチームビルディングを進めている途中でのメンバー入れ替えだったのでプログラムもそれに合わせて変えて行く必要があります。
新たにゼロからチームを作り直して行くため、元々対話によるビジョンの明確化と共有をするはずだったところをアクティビティによる体験型のプログラムに変更しました。対話や座学では得られないものが体験から得られるからです。
今回は、なぜ体験をベースにチームビルディングのプログラムを組んでゆくのか?について考えてみましょう。
チームを作って行く時にまず明確なゴールに向かって、チーム全員が夢中になって取り組み、強い達成感や悔しさなどの心が動く体験を共有することがまず大切です。これはつまり本当にチームになる感覚をまず実体験するということです。そうすることによって自分たちがより素晴らしいチームになり得る可能性を自分たちの中に見ることになります。そこから「仕事でもこんなチームで仕事がしたい」という感情も生まれますし、実際に参加メンバーの関係性が変わってゆく事を実感します。まずチームの感覚を実体験して体で覚えることが肝になります。
これはいくら座学で学んで理解したとしても体験から得られる理解には及びません。「こうなったらいいな」という想像ではなく実際にチームになる体験をします。
松下幸之助氏の言葉として「塩の辛さ、砂糖の甘さは学問では理解できない。だが、なめてみればすぐ分かる。」という格言が有名ですが、まさにその通りです。チームビルディングについてどんなに頭で学んでも実際にチームビルディングしてゆくことは難しいですが、実際に体験すれば塩を舐めてみるくらい明快に分かります。そしてそれは実践につながるものになります。
知っていることと出来ることは違うと言いますが、私たちのプログラムの目的は知ることではなくて実践することにあります。実際のチームを良い方向へ変化させていくことです。知ることは知ることで面白いですし満足感を満たします。もちろん知識もチームビルディングに活かせますが、それそのものは良いチームを作ることではないのです。
また違う観点から見ると座学などで教えてしまうと参加者の学びの機会を奪ってしまう事になります。「先生が言っていることをそのままコピーすればいい」「それが正解だから自分で考えなくていい」となってしまいがちです。体験し、それをベースに考え、話し合い、深めて行くと自分自身にとってより深く意味のある学びになります。
同じ体験をしても実際に本人が感じること、学ぶことは人それぞれ違います。なぜならその人が大事にしている考えや直面している問題が人それぞ違うからです。体験から感じたものをベースに対話で学びを深めて行くと一人一人に必要なものを一人一人が学ぶことになるのです。
そして体験による共有や学びを踏まえて対話を深めて行きます。