第54回『異なる常識の相手と、その違いを超えて新たな常識を作って行く方法』
2013年06月20日
組織の中で全く両極にある二つの考え方が対立し埒が明かない時に、よくある解決法としてはより力のある人の考え方に合わせるという方法などが取られています。又はフラットな関係でも建設的な解決法が取られずに終わらない対立が続いたり、フェアではない解決法がとられたりといった事が起こっています。
しかしそれらとは違うアプローチでどちらが正しいのかという考え方から離れて新しい考え方を見つけて行く方法があります。今回はその方法に付いて考えてみましょう。
例えば、
・「残業無しで帰って、自分の時間を大切にしたい。遅くまで残業している人が居ると気兼ねして早く帰りづらいので、規定でしっかりと全員残業無しで帰る様にしてほしい」
という考え方と
・「ノー残業デーなどと言われても、現実問題仕事は山積みで、誰かがなんとかしなければならない。早く帰れというなら業務を減らすか、人を増やすかの対策をしてほしい」
という考え方がぶつかっていたとします。これくらいであれば大した対立ではないかもしれませんが、対立がエスカレートすると、とにかく相手を否定しようとしたり、自分の正当性をなんとかして押し付けようとしてしまったりしがちです。
「そもそも残業しなきゃならない人たちは能力が低いから早く帰れないだけ。もっとスキルアップしてもらわないと困る」「楽な仕事をしている人たちが大変な人の手伝いもせずに早く帰りたいと言っている。そもそも仕事する気があるのか?」などといった無用な対立までも起こりえます。
ここでの問題は、二つの全く異なる常識に基づいた考え方があり、どちらかを正しいとすると他方を否定する様な結果となってしまう事です。
この解決方法の第一のステップは二つの全く異なった考え方がある事をお互いに認める事です。「一つの事実に対して、Aという考え方と、Bという考え方がありますよね。」という事を双方が確認します。その時に自分の常識に照らし合わせていかに相手が悪いか、非常識かといった視点は切り離し、純粋に「違う」という事実だけをお互いに認め合います。
そして次に共通の目的を確認します。違いを乗り越えてチームで何かに取り組まなければならないといった事情がある時には必ず共通の目的が存在します。その共通の目的を見つけ出し、「この目的についてはお互いに一緒だ」ということを確認します。その時にできるだけ抽象化せず、具体的な目的を共有しているほうが望ましいです。例えば「このプロジェクトを成功させたい」という目的を共有しているとして、そこから更に踏み込んで「プロジェクトを成功させて自分たちの会社をもっといい会社にしたい」といった目的を共有している方がより望ましいと言えます。
この段階で、可能な限りお互いに対する敬意や尊重し合う気持ちを確認します。
「考え方は違うけれど目指すところは一つ」という事を共有するのはとても気持ちのよいものです。
次に、共通の目的に向かうためにお互いに違う視点や考え方を持っているが、それ自体は悪いことではなく、むしろ良いことであることを確認します。違う視点があれば、見えている範囲が広がり、違う考え方があればより多様な角度から検証する事が出来ます。
そしてその理解に基づいて自分たちの目的のために今、自分たちはどの様な選択や決断をするべきかを決めます。そうすると共通の目的のために対立する視点を今は保留するということもできるし、異なる常識を合わせて、その上位概念となる新たなより普遍的な常識を見つけ出すことも出来ます。
「考え方は違うけれど目指すところは一つ」という理解のもとに、お互いへの敬意を持つ。そして一緒に決断し、行動し、結果が出る。その結果が良いものであれ、思わしくないものであれ、常識さえも通じないメンバー同士のチームビルディングがそこから始まります。そして同じようなプロセスを繰り返しながら異なる常識が重なり合い、新たな常識、新たな文化が生まれてくるのです。