第19回『対話の場が逆効果になってしまう!?』
2012年02月16日
「全社員に参加意識を持ってもらいたくて対話の機会を持ったが、無責任な話しかしなくて逆効果なってしまった。」という話を聞きました。「全員参加の対話の場を持つなんて素晴らしいじゃないか、続けていればきっとうまく行くよ」という見方もあります。しかし、よく話を聞いてみるとなぜうまく行かないのかの理由がよく分かりました。それは「対話の触媒」の使い方で改善できるものでした。
対話の触媒とは、その場に投げかけられる「問い」の事です。それ自体は直接に対話の成果と結びつくものではありませんが、そこに触媒がある事で参加者の思考と思考がつながり合い、新たな思考の化合物が生まれて来るのです。対話の場での問いは、必ずしも望む成果に直結する問いが機能する訳ではありません。社員に自分たちが主体的に会社を動かして行く意識を持ってもらいたい時に「私たちが主体的な意識を持つためにはどうしたら良いでしょうか?」だとか「あなたが経営者だったらこの会社をどの様に導いて行きますか?」といった問いではなく、もっと相手がその問いをどう受け取るかをしっかりと考えながら吟味して触媒となる問いを選びます。
これを選ぶために最低限見なければならない要素は二つあります。
それは
・現状、参加者がどの様な状態にあるか。
・終わったあと、参加者にどのような状態になっていて欲しいか。
です。
同じ目的であれば誰にでも同じ問いを処方すれば良いのかというとそうではありません。その人たちの現在の状態を見ないと適切な問いは生まれません。
私も以前は問いで随分苦労しました。問いのリストを作って、そこから選んで問いかけるような事もやりました。今でも日々無意識に行っているのは「相手はこの問いをどう受け取るだろうか?」ということを常に考えながら発信していることです。相手がその問いを受け止めて、望んでいるような対話が生まれるためにはどんな問いが良いのか?それをしっかりと考えて行くと、望む場を作るためには問いをただの触媒と割り切って、問いそのものではなく、その問いがあることで思考がいかに繋がりあうのかを重視して触媒となる問いを用意するかというスタンスがよりよい場を作ります。
「あなたが何を問いたいのか?」ではなく、「あなたが望む対話の場を作るためには参加者にどんな思いや考えを持ってもらえればよいか?そのためにはどんな問いかけがあると良いのか?」という事を考えるのです。良い触媒は思考を活性化させ、さらに複数の人の思考を繋ぎ、かけ合わせる効果を生みます。
あなたが用意する問いはただの触媒です。直接的な影響力のある言葉は必要ありません。それをきっかけに思考と思考、または思いと思いがつながりあう事を考えて問いを考えてみましょう。