第16回『リーダーは強くあるべきなのか? 』
2012年01月05日
リーダーやリーダーシップと言った場合に、チームの前に立ち、力強く導くリーダーの姿がイメージしされます。誰よりも能力が高く、皆の前で力強いメッセージを発信するリーダー像です。しかし、「導く者」というリーダーの本質に立ち返って考えた時に、そういった表面的な強さにこだわる事が逆効果になってしまうことも起こります。多くのリーダーがここで失敗して苦労しています。表面的な強さに惑わされないために、何に気をつければ良いのでしょうか?
例えば、「部下より自分の方がより知識や経験を持っていなければならない」と考えていると、部下の知識に頼って教えてもらうことが出来なかったり、自分が理解できないことを言っている部下を否定したりといったことが起こっています。
また、常に自分の能力の高さやポジションにばかりこだわっていると、自分の力を肯定するために他者を否定したり、理解しようとさえしなかったりといったことも起こります。
言い訳や巧みな自己正当化でどんどん本質から離れていってしまいます。
お互いの強さを競い合う肉食獣の群れの中で、百獣の王になろうとしているようなものです。
本当に思いを一つにして、共に素晴らしい成果を収めて行く為には、お互いの弱さを見せ合う事も必要です。弱さを隠しあっていては当然その弱さを補い合うことも出来ません。しかし、弱肉強食の獣の群れのような組織では自分の腹を見せてしまうと、自分が食われてしまうのです。
私自身、強く在りたいとずっと思って来たと思いますし、今でもそう思っています。しかし、その強さの意味は変わって来ました。10代の頃、始めて仕事で自分のチームをマネージしなければならなくなった時は、はりきり過ぎて自分より年上のメンバーに自分のやり方を押し付けて、力で押さえつけようとしていました。当然ながら若造に偉そうに言われたメンバーからの反発にもあいました。
今になって思えば、自分が弱いからこそ他者を力で押さえ付けなければ自分の為すべきことが為し得なかったのだと思います。もちろん今でもそういった弱さが出て来る事もあるかもしれませんが、自分のありたい姿はそうではないと意識しています。
「リーダーは強くあるべきなのか?」という問いに対しての私の考えは「強くあるべき」だと思っています。しかし、その強さは獣の群れに牙を剥いて黙らせる強さでは無く、獣の群れの中に裸で立てる様な強さです。更には怯えた獣をも導いてゆけるような強さです。
吼えなくても良い強さを私は持っていたいと思います。そして世の多くのリーダーたちがそのような強さを持っていて欲しいと願っています。