第1回『本気のコミットメント』
2011年06月06日
『全員で組織の目標に向かって頑張っているのに、どうも成果に繋がりません。どうしたらチーム全員が成果に繋がる本気のコミットメントをする事が出来るでしょうか?』
「本気のコミットメント」というのはなかなか難しいものです。「本気でやれ!」と言われたからと言って本気になれるわけではありませんし、自分で本気になろうと思ったからといって、そう簡単にスイッチが入れられるものでもありません。私も本気でやらなければと思ってもなかなかそうなれない事があります。自分で自由に自分の本気をコントロール出来たらどんなに便利でしょう。
簡単にコントロールできない反面、人は一度本気になると素晴らしい力を発揮します。普通に考えたら無理としか思えない難題に挑戦し、乗り越えてゆくことが出来るのです。
本気と言うのは、何がなんでも成し遂げる、失敗はあり得ない程のコミットメントをしている状態です。「頑張ったけどダメだったね」ではなくて、普通では成し遂げられないことを成し遂げたこの上ない達成感とともに終えるものです。
私自身、本気でやっていたつもりが実は本気ではなかったということに後で気づくとがあります。それは、「つもり」の本気から本物の本気になった時です。
たとえば、ここ何年もECOの為のco2削減や節電が言われて来ました。その為に企業も個人もいろいろな取り組みをして来ました。本気で取り組んで来たはずです。しかし、それが本当の本気ではなかった事に後で気づきました。2011年3月11日の大震災の被害で本当に電気が足りなくなった時です。誰もがこの未曾有の危機に何か出来る事をやろうと本気になり、想定需要電力の59%という消費電力削減の成果を上げました。それまでいくらco2削減や節電が言われていても、本当に本気ではなかったのです。
これが本当にコミットした本気と本気のつもりの違いです。
では、どの様にしてそれを引き起こす事が出来るのでしょう?
その鍵の一つは危機感にあります。「何がなんでもこれを成し遂げなければいけない」という強い危機感、命に関わる危機感、絶対に守り抜かなければならないものが崩れ落ちようとしているという危機感。
出来るかどうかに関わらず、成し遂げなければならない時に本気になるのです。そこにすでに選択肢はありません。「成し遂げる」以外の道は残されていないのです。
チームで仕事をしていて、他のメンバーが本気になってくれないことが問題になる時はそれを問題視している人と他のメンバーの間で認識ギャップがあります。ある人が強い危機感を感じている事実に対して他のメンバーはその認識を持っていないという状態です。
ここで出来る事は、相手がどの様に事実を認識しているかを理解する事、そして自分がどの様に事実を認識しているかを伝える事です。
しかし、本当に重要なのは「自分自身が本気になる」という事です。本当に本気であれば、それは必ずチームメンバーに伝わります。本気は伝染するのです。あなたにもそんな経験はありませんか?
私も経験があります。チームビルディングのファシリテーターとして、チームの課題達成をサポートしている時に「このチームは本気になっていない。もっと本気でコミットしなければどんなに時間をかけても達成できない」と思っていた時、ふと気付いたのです。「このチームの課題達成と成長に自分はファシリテーターとして本気でコミットしているだろうか?」相手の本気を問う前に自分が本気でなければ、それは相手にも伝わります。
自分に相手の本気を問う資格がない事に気づいた時、自分を恥じた事によって本気になりました。そしてその本気はチームにも伝染して行ったのです。その後、難題を成し遂げたチームは口々に強い「達成感」を語っていました。
モチベーションを高める方法は色々あるかもしれません。でも本当に人が本気になる為の方程式なんて必要無いのかもしれません。
なぜなら、人は本気にならざるを得ない環境で本当に本気になりそれは誰か他人の意図でコントロールするものではないからです。大事なのは自分自身の本気を問う事。その問いさえあれば本気にならざるを得ない時には必ず本気になれるはずです。本気になっていない自分に悔しさを感じたら、それが本気の第一歩です。本気は「気」だけではどうにもなりません。それが行動に結びついた時に本気が育ち始めます。