第95回『心理的安全性のまとめ』
2022年09月29日
我々チームビルディングジャパンは15年以上前から組織づくりを専門に行ってきました。
いま「心理的安全性」という言葉が広まってきていますが、
これを流行で終わらせてしまってはもったいないと思っています。
心理的安全性がどれほど大事なのか、どれほど組織づくりの要になるのかということを
みなさんにきちんと伝え、そして活かしてもらいたい。
より心理的安全性が高く、よりパフォーマンスの高い組織に変わってもらいたい。
そのような思いでこのシリーズを始めました。
その心理的安全性シリーズも最終回。
まとめとして、心理的安全性の高いチームをつくるうえで大切なポイントをお伝えします。
「チームの仲が良い=心理的安全性が高い」ではない
チームのリーダーが「うちのチームは心理的安全性がなかなか高いんですよ」と言っていても、実際にはただ仲が良いだけだということがしばしばあります。
心理的安全性について尋ねられると、チームメンバーの仲の良さ・悪さを表面的に見て
「心理的安全性が高い」「低い」と言っていることがありますが、
心理的安全性が高いかどうかは、単純に仲が良いか悪いではなく、
成果を上げるために必要なことをお互いに発信し合えているかどうかがポイントです。
チームメンバーの仲が良いからといって、心理的安全性が高いとは限らないのです。
傍目には喧嘩のように見えるかもしれない激論が交わされていたとしても、
お互いに尊重し合い、異なる意見を大切にし合う文化があれば、対立さえもチームの力に変えていけます。
心理的安全性が高い状態であれば、むしろ多様な視点をチームの力に変えていくことができるのです。
表面的な関係性を円滑に保つためには、思っていることを言わない方がという考えが普通にまかり通っています。
むしろ、本当に思っていることを口に出さないということが美徳にさえなっている。
しかし、本気で組織を変えたければ、ここに踏み込んでいく必要があります。
そのためには、単純に表面だけ見ていては気づけません。
メンバーが思ったことを本当に話し合えているかどうかというところに目を向けてみてください。
「いつも黙っているアイツ」の心理的安全性が低いのではない
「アイツはいつも黙ってるんだよ」と、心理的安全性を個人に属したものとして捉えている発言もよく見られます。
しかし、「なかなか発言しない人は、心理的安全性の低い人である」というのは大きな誤解です。
個人の特性として発言の多い人と少ない人はもちろんいますが、
心理的安全性は個人の特性ではありません。
チームの成果のためにお互いが思ったことを言い合えるかどうかは、
個人の問題ではなく、チームの組織文化によるものです。
これは、同じ人物でも異なるチームに行くと、心理的安全性が高く活躍するケースがあることもからもよくわかります。
その人材が生きるかどうかは、チームの心理的安全性に関わっています。
決して個人のせいにせず、メンバー一人ひとりが活躍できるような環境をつくり、組織文化を育てていくことが重要です。
あなたの「当たり前」が世の中の常識ではない
多くの人は、自分たちの組織文化に気づけていません。
なぜ気づけないかというと、組織文化はその組織のなかにいる人たちにとっては「当たり前」になっているからです。
外の組織と交わる部署や経営トップ層は比較的自分たちの組織文化を意識しやすいですが、
閉鎖的な、内向きな組織の中にいる人ほど、自分たちの「当たり前」に気づけないことが多く、
自分の組織の当たり前が、世の中全体の当たり前だと思ってしまっています。
「仕事ってこういうものでしょ」「社会人ならここまでは言わないよね」と当たり前のように語る。
新卒の純粋培養で育ってきた人たちばかりの会社では、特にその傾向が強く見られます。
閉鎖的な組織においては、上司や先輩の言う「当たり前」が不動の「当たり前」になってしまっており、実はそれが社会では「当たり前」でないことに気づいていないのです。
この状況を打開するために一番良い方法は、とにかく外に目を向けることです。
例えば外の会社の人と協業したり、勉強会をしたり・・・
外に目を向けて、自分たちの組織外の当たり前にたくさん触れることで
自分の会社の当たり前と比較することができるようになります。
自分の会社の当たり前と他の会社の当たり前を比較することによって、
常識だと思っていたことがそうではなかったと気づくことができれば、大きな第一歩です。
まずは外に向かって一歩を踏み出すことで変化し始めることでしょう。
さいごに
心理的安全性が高い組織にするために、自分たちの「当たり前」を変えることは簡単ではありません。
地道な努力が必要です。
利き手でない方で食事をするようなもどかしさや、
生活習慣を変えるような大変さを感じることでしょう。
生活習慣を改善して体を変えていくことへのアプローチと、
組織の「当たり前」を変えて、組織文化を改善していくアプローチはほぼ同じものです。
もしあなたがダイエットができるなら、きっと組織文化も変えていくことができます。
チームでダイエットに臨むような気持ちで、組織の習慣を改善しましょう。
日常の小さな習慣を一つひとつ変えていくことによって、
心理的安全性が高く、パフォーマンスが高いチームになっていくことでしょう。
例えば、社外でなくとも、社内の他部署やグループ会社での交流をするだけでも効果的です。
まずは会社内の部署の壁を取り払って勉強会や対話会をしてみてはいかがでしょうか。
小さなことを継続的に続けていくことだけでも着実に組織は変化します。
自分たちの当たり前に気づき、地道にそれを毎日毎日変えていく。
そうすれば、いつか気づいた頃には、新しい組織文化に変わっているはず。
ぜひ心理的安全性の高い組織文化を築いてください。応援しています。