第91回『心理的安全な場を壊す4要素 』
2022年07月21日
不確実性の高い環境の中で成果を出すためにも、
心理的安全性を高めたいと考える組織が増えてきています。
前々回のコラムでは、心理的安全性を高めるためには
1)目的やゴールをチーム内でまずはしっかりと共有することからスタートし、
2)そこから徐々に、それぞれが思っていることを言い合えるようにする
この順番が重要であるということをお伝えしました。
そして前回は、チーム内で思うことを言えない状態を引き起こす
「心理的安全性を妨げる4つの不安」についてご紹介しました。
今回はもう一つ、心理的安全性を高めていくときに
絶対に意識しなければならないポイントである、
「心理的安全な場を壊す4要素」についてご説明します。
「組織を心理的に安全な場にして何でも言い合おう」とすると
人を傷つけたり、攻撃したりするようなことを言ってしまっていることがあります。
これでは、本来の心理的安全性を高めることにはつながりません。
夫婦関係の研究者として有名なジョン・ゴッドマンによると、
人間関係を壊す4つの要素があるといいます。
これらは職場の中でも大事だと言われており、意識して注意することが必要です。
「心理的安全な場を壊す4要素」
- 批判
- 自己防衛
- 軽蔑
- 逃避
一つずつ、順に解説していきましょう。
1)批判
全部相手のせいにして
相手を批判するということです。
「自分は正しい」「自分は間違っていない」
自分を正当化するために
相手が間違っているという発言をします。
心の余裕がないと起こりがちです。
何か問題が起きたときには、「この人が悪い」ではなく
「悪い状況が相手の間に起こっている」と認識して、
「相手のせいだ」「自分のせいだ」という考えから完全に切り離し
起こっている問題そのものを見るようにします。
「アイツが悪い」「アイツがこうしてくれない」と言って
自分を正当化するのは簡単ですが、逃げずに問題そのものに向き合うようにしましょう。
2)自己防衛
ここでいう自己防衛とは、
自分は悪くないということをひたすら主張するということです。
何か問題が起こったり、人間関係が悪くなったときに、
「自分は悪くない」「私はすべて必要なことをやっている」と言い訳をします。
相手を批判するわけではありませんが、自分は悪くないと言い張ります。
自分の安全を守らなくてはならないときによく出てきます。
3)軽蔑
ここでいう軽蔑とは、相手を見下した態度で接することです。
軽蔑など自分はしてないと自分では思っていても、
相手は見下されたと感じていることがよくあります。
「マウントを取る」というのも軽蔑の一つです。
自分は相手より上である
相手は下である
相手を見下す
そもそも対等に見ない
これが軽蔑です。
起こっているトラブルから自分を守るために
軽蔑を使っています
マウントをとることによって強く見せているけれど
実はトラブルから逃げているのです。
4)逃避
逃避は、完全にコミュニケーションを遮断することです。
相手を拒絶し、「もう話さない」という態度をとります。
子どもが部屋から出てこない状態をイメージすると分かりやすいかもしれません。
問題から自分を守って逃げているときに
批判、自己防衛、軽蔑が起こります。
これらの態度は自分と周りの人の人間関係を傷つけ、壊します。
特に軽蔑は最悪です。ひどく傷つけます。
元々は自分の安全を確保したいという気持ちから発生したものですが、
これら4つの表れ方をすると、人間関係が全て壊れてしまいます。
「うちの会社は心理的安全性が高いから何でも言い合えるよね」
と思っている場合でも、今日ご紹介した4種類の態度が思い浮かんだら
ぜひ一旦一呼吸して待ってみてください。
思っていることをお互いに言い合うという本来の目的からはずれています。
チームの存在意義や実現すべきことに対して、
そのために必要なことはすべてお互いに場に出し合おうということです。
今回ご紹介した4つの要素は
その目的達成にマイナスの効果しかありません。
相手に批判されれば、自分も批判したくなるでしょう。
4つの要素は、組織の中で渦を巻くように広がります。
「自分たちの組織は心理的安全性が高い」と思っていても、
人間関係を壊す4つの要素は、放っておくと現れます。
それを防ぐためには、毎日毎日、本当に毎日、
日常の小さなコミュニケーションの中で取り組み続けることが絶対に欠かせません。
心理的安全性を高めるために楽しいイベントをやって仲良くなった。
楽しかったね。良かったね。
けれども日々のコミュニケーションの中での取り組みを
毎日毎日、欠かさず毎日続けていかないと
心理的安全性の高さを保つことはできないのです。
心理的安全性を組織文化にし、習慣にし、
チームの力として活かし使っていくまでの道のりは大変です。
しかし、大変ですが取り組む価値は非常に高いものです。
日常の当たり前を変えていく、その困難な取り組みをしているみなさんを応援しています。
難しいけれど一緒にチャレンジをしていきましょう。頑張ってください。