第86回『なぜチームビルディング専門会社は心理的安全性を大事にするのか』
2022年05月12日
「心理的安全性」が人材育成、組織開発では大切であるという考え方が広まるに従い、
組織の心理的安全性を高めたい、心理的安全性を学びたいという方たちが増えてきています。
そのこと自体はとても良いことではあるのですが、「心理的安全性」というキーワードがキャッチ―なだけに誤解を生むこともあるようです。
心理的安全性を高めるのは、そう簡単なことではありません。
ただ流行りのものに乗っかって、心理的安全性研修で学んだことを実践してみようという程度ではうまくいかず、おそらく壁にぶつかることでしょう。
心理的安全性はただの流行り言葉ではありません。深い意味があります。
心理的に安全な組織をつくるのは大変ですが、取り組む価値があるものです。
このコラムでは、心理的安全性は実際はどのように機能するのか、なぜ大切なのかについてシリーズでお伝えしていきます。
まずは、なぜチームビルディング専門会社が心理的安全性を大事にするのかについてお話ししましょう。
心理的安全性とは?
心理的安全性とは、「対人リスクをとっても大丈夫という安全な環境のこと」であるというエイミー・エドモンドソンの定義が一般的には有名です。
例えば、アイデアを述べたり、質問したり、異論を唱えたり、失敗したことを話すときなど、発言することにはリスクが伴います。これが、ここでいう対人リスクです。
対人リスクが軽減され、言いにくいことが言える状態であり、発言の安全が守られているのが心理的安全性が高い状態となります。
心理的安全性がなぜ重要なのか、心理的安全性が高いことによって何が起こるのかについては今後のコラムで詳しくお伝えすることにしまして、今回は、組織づくりの専門会社であるチームビルディングジャパンがなぜ心理的安全性にこだわり大切にするのか、その理由についてお話ししましょう。
チームビルディングジャパンではなぜ心理的安全性を大事にしているのでしょうか。
それは、心理的安全性が高いことによって、メンバー一人ひとりが自分らしく、そのチームがその組織らしくいることができ、高いパフォーマンスを発揮することができるからです。
「らしさ」が発揮できる状態というのは、対人リスクが無く思ったことを言える状態のことです。
例えば、自分が大切だと思ったことを大切だと言ったり、「あれ、大丈夫かな…」と思ったときに「ちょっと待って」と言ったりすることができる状態です。
実際の仕事の現場では、「こんなことを言ったら怒られるかな」「出しゃばっていると思われるかな」などの対人リスクが発生しやすいものです。
仕事用の自分の仮面を被って、思ったことを言わない、言えないということが起こっています。
これではメンバーのその人「らしさ」を活かせていない状態です。
メンバーの「らしさ」を活かし、どのような意見でも受け入れ合う関係性や環境が
チームにとって非常に重要です。
我々自身もずっと取り組んできましたし、効果を発揮することも見てきました。
チームビルディングジャパンが大切にしている「らしさ」は、「多様性(ダイバーシティ&インクルージョン)」と密接に関係しています。
多様性を受け入れ合おうということについては、口ではみんな大切だと言いますが、実際にはなかなか実践できていません。
多様性が受け入れられない状態というのは、心理的安全性が低い状態です。
ジェンダーや障害者雇用などの分かりやすい多様性だけでなく、チームメンバーが自分らしい自分でいられるよう、チームで働くときには一人ひとりが多様であることを受け入れ合い、活かすことが大事です。
「大体みんな一緒」だと思っていませんか。その先入観で勘違いが起こっています。
仕事なら当然だと思っていることも実は人によって「当たり前」は異なっています。
しかし、上司が「仕事ならこれが当然でしょ」と言ったら、部下は上司に反論しにくい。
1回目は反論したとしても、2回目は絶対言えない。
実際にはこのようなことが起こっています。
これは、違いを受け入れていない、「らしさ」を活かせていない、多様性を受け入れ合っていない、という状態です。
違うものを歓迎し受け入れることはチームのパフォーマンスに大きく影響します。
違いを受け入れ合い、お互いの「らしさ」を受け入れ合う。そしてそれを交ぜ合わせて新しいものを生み出すことに、心理的安全性の価値があるのです。
違いが受け入れられないと心理的安全性が低くなります。
そのため、チームビルディングジャパンでは「多様性を受け入れ合い、活かし合う」ということをずっと大切にしてきました。
自分らしくいられない環境、上司に従わなくてはならない環境というのは、ピラミッド型の組織によく見られる環境です。
ピラミッド型組織には、リーダーの指示に従ってみんなで進むことができるという良い部分もあります。
一方で、「らしさ」を活かしにくく、心理的安全性が低いのがピラミッド型の弱点です。
なぜなら、上から降りてきたことを正解として受け入れて正しく行うのがピラミッド型組織の特徴であり、組織に多様性やその人「らしさ」があっては困るのです。
しかし、社会環境がピラミッド型組織に向かなくなってしまっています。
不確実性が高く、昨日の正解が明日は古くなっています。どんどん変化していて先が読めないVUCAといわれる環境においてはピラミッド型組織は非常に弱いです。
上の人が正解を知っているときは、ピラミッド型の組織が大変有効でした。
しかし、誰も正解を知らない不確実性が高い環境の中では、何が最適かわかりません。
いろんな人の知恵を寄せ集め、行動のなかで経験から学び、発見していく。
つまり、組織として経験を共有し、振り返って学習し成長し続ける必要があります。
心理的安全性が高い組織では、多様な視点を活かし、失敗も共有し合えます。
ちょっとしたインシデントやアクシデントを共有し、そこから学ぶことができます。
失敗談が語れない組織は重大なミスにつながるおそれがあります。
組織として学習し続けるためには心理的安全が必要です。
とはいえ、ピラミッド型の組織を無理矢理フラット型組織に変えるのは困難です。
そこで、我々はピラミッド型とフラット型のハイブリッドな組織づくりをしています。
ピラミッド型組織を崩してフラット型組織にするのは難しいですが、
ピラミッド型組織のなかでフラット型のコミュニケーションをとることは可能です。
ピラミッド型組織のなかに小規模のチームをたくさんつくり、
チームの中ではフラット型コミュニケーションをとるようにする・・・という組織づくりをずっと行ってきました。
チームの中では心理的安全性が高く、フラットなコミュニケーションがとれるのでパフォーマンスが上がります。
そのようなフラット型のチームが組織の中に増えていくと、
組織全体としてはピラミッド型組織だとしても、
チームとしては心理的安全性が高く、フラットなコミュニケーションを取ることができるようになるので、結果的に組織全体のパフォーマンスが高くなるのです。
心理的安全性が高いと、一人ひとりが「自分らしく」いられます。
仕事用の仮面をつけずに、ありのままの自分でいられる。
それによってお互いの意見を自由に出し合い、未知の課題を解決していく。まだどこにもないアイデアを発見していく。起こらなくていい事故を減らしていく。
このようなことを実現できるのが「心理的安全性」です。
心理的安全性は本当に意義深く、大切なものです。
きちんと組織に心理的安全な文化を根付かせていく必要があります。
そのためには地道な継続に励むしかありません。
ピラミッド型組織のままでいい、ということはもうありません。
これからの時代、社会環境は不確実性が高まっています。
どのような組織であっても、心理的安全性を高め、フラットなコミュニケーションが取れる状態がますます求められるようになります。
このコラムのシリーズでは、心理的安全性が高いチームをつくる難しさをどう乗り越えていくかもお伝えしていきますので、ぜひ継続的に取り組んでみてください。