第54回『なぜカメラONがチームのパフォーマンスを上げるのか?』
2021年02月18日
新型コロナ感染拡大を機に、テレワーク率が上がっています。
私たちはテレワーク/リモートのチームでパフォーマンスを上げるために比較的安易に取り組めるオンライン会議時の「カメラON」をおすすめしています。
今回はなぜカメラONだとチームの成果につながるのか、その意味や効果を解説します。
現在の社会環境は、先が読めない、いわゆる「VUCAな世界」と言われたり、複雑な課題を解決してなくてはならない時代だと言われたりしています。
少し前に論理的思考が流行りましたが、現在のような状況下ではロジカルに考えるだげで解決できるわけではありません。もちろん、チームメンバーの誰もが論理的に考えられることは大切です。
そもそも論理思考で解決できる課題というのは、個人の能力の範囲で解決できてしまうことが多い。論理的思考能力の高い人、簡単に言えばIQの高い人に依頼すればそれで済む仕事もあるでしょう。
ただ、それで解決するのは論理的に答えを探れば答えが導かれる場合です。先が読めない環境の複雑な課題では通用しません。
なぜなら、無限の可能性や選択肢があり、その中でどうしたら最高の結果につながるかは、論理的に導こうとするとあまりに複雑で時間がかかりすぎるからです。
では、どうしたらよいのでしょうか。
論理的思考、あるいは垂直思考といわれるものに対して、「水平思考」「ラテラルシンキング」と呼ばれる考え方があります。論理思考のように順序だてて考えるのではなく、水平思考では横に飛び、全く違った発想をします。多様な視点というのがものすごく大事になります。
例えば、「りんごが3個あります。これを4人で仲良く分けてください」という課題を解決するとしましょう。
3個のりんごを4等分にして、一人につき3切れずつ配れば平等に分けられる。これが論理的思考、垂直思考です。
一方、水平思考は、そこからはみ出た思考をします。
・「一人りんごが要らない人がいるかもしれないよね」「要らない人を見つけようよ」
・「りんごを全部ジュースにしてしまって、均等にコップに注げばいい」「ジュースよりリンゴジャムは?」
・「リンゴ以外にオレンジとかないかな?」
など、普通に論理的に考えたらこれが正解だよね、というところから外れたいろんな発想をしていきます。
この水平思考が、今の複雑な先の読めない環境では必要なのです。
先が読めず、複雑な要素が影響し合う現在の環境の課題は、IQが高い個人を集めただけでは解決できません。
複雑な課題を解決していく能力の高いチームとはどのようなチームなのでしょうか。
様々な研究がされていますが、有名なのが「集団的知性」についての研究です。集団的知性の研究とは、簡単にいうと「個人でいう知能指数のような、チームとしての能力の高さは存在するのか?」という探求から始まった研究です。
研究の結果、「集団的知性」と呼ばれる「集団として様々な未知の課題を解決して行く力」が存在することが確認されました。
また、「個人の能力の高さはチームの力である集団的知性に関連性が低い」ということがわかりました。
ハイパフォーマンスだったチームには、個人の能力の高さとは全く関係ない3つの共通点がありました。
・発言機会の平等性:チームのメンバーに平等に発言の機会がある
・社会的感受性の高さ:周りのメンバーがどう感じているか言葉にしなくても感じ取ることができる
・女性比率の高さ(※)
(※「女性比率の高さ」については、女性の方が社会的感受性が高い人が多いことから、「女性比率の高さ」は「社会的感受性が高い」ということの現れであり、必ずしも女性である必要はない、とも言われています)
発言機会を平等にすることは「順番に話す」「話の長すぎる人に気づかせる」「話していない人に質問してみる」などの関わりかけによってオンラインでも可能ですが、「社会的感受性」はオンラインだと非常に発揮しにくくなります。
社会的感受性の高い人が、その力を発揮できないでいる。それが今のテレワーク環境で起こっている状況です。
「社会的感受性」とは、言葉で言ったことではなく相手の表情から相手の感情を感じ取る力です。
ですから、オンラインで社会的感受性を発揮するためには相手の表情を見なくてはなりません。
オンライン会議でもお互いの表情をよく見て、できるかぎり社会的感受性を皆が発揮していくことがオンラインチームを活かしていくうえですごく大事です。
そのためには、少なくともカメラONにしておくことが欠かせない、ということになります。
社会的感受性をもう少し掘り下げて考えてみましょう。
社会的感受性の高さは、扱われるコミュニケーション量の多さに関連しています。
言葉だけでは伝わらないものをきちんと受け取るためには、言葉以外のものでコミュニケーションをとることが必要です。
コミュニケーションというと、誰かが伝えて、発信して、誰かが受け取って、また投げ返して・・・というキャッチボールモデルをイメージしがちです。
でも、実際は話していない時も常に発信しているし、話しながらも常に受け取っています。
話している人だけが発信しているわけではありません。聞いている人も同時に発信しているのです。
オンラインでコミュニケーションを取る際に、カメラOFFの状態では、話している人しか発信していないし、話されていないことは受け取れません。
カメラONにしていれば、社会的感受性が高い人は発信しながら同時に受信することができます。
さらに、誰もが社会的感受性を磨いていくことによって、集団的知性を発揮して能力の高い個人では解決できないような未知の課題を解決していくことができるはずです。
少しでもカメラごしに相手の表情をみて、相手の内側にどのような感情があるのかに目を向けてみてください。
それがこの不確実性の高い、先の読めない時代を生き抜いていくチームを育てる力になるはずです。