第53回『心理的安全性を高めるためにリーダーができる3つのこと』
2021年02月04日
今日は、心理的安全性を高めるためにリーダーができる3つのことをご紹介します。
まずはじめに、心理的安全性が高い/低い状態とは、それぞれどのような状態を指すのか、ということからご説明しましょう。
心理的安全性が高い状態とは、組織チームの中で自分が発言・行動したときに、他の人からどう見られるか、何と言われるか・・・という怖れを抱かずに自由に発言したり、行動したりできる状態のことです。
逆に、他の人がどう思うか、どう反応するかが気になって思うようにできない状態というのが心理的安全性の低い状態です。
こうお話しすると、単に思ったことをズケズケと言い合っている状況を思い浮かべる人も少なくないですが、そうではありません。
他の人がどう思うかを気にせずに語れる、危害を加えられることがない、というのが心理的安全の高い状態です。ですから、まず先に非難されたり否定されたりするリスクが無い状態にしなくてはなりません。
思ったことをズケズケ言い合うことでお互いに傷つけ合っているような状態は、心理的安全性が高い状態とはいえません。思ったことを話しているという点では似ているように見えますが、その意味は全く違います。
まずは傷つく心配がない状態を作る、そして、お互いの視点や意見、経験などを尊重し合う、だから思ったことを言える、危害を加えられるというリスクがない・・・というのが心理的安全性を理解するために重要なポイントとなります。
では、心理的安全が何のために必要なのでしょうか。それは、チームとして学び成長していくためです。
既知の課題に取り組む場合や、充分に知っていることをやる場合、単にルーチンワークをする場合などは、新しい挑戦をする必要がないので正しいことをただ正しくやれば済みます。
一方、何が正解なのかわからない場合、新たな挑戦をしなくてはならない場合、今までのやり方では立ち行かない場合や、今のコロナ禍のように不確実性の高い環境、未来の予測できない環境では、チームとして新たな道を切り拓いていかなければなりません。こういうときに大事な組織の関係性、心の安全な状態が心理的安全性です。そのため、チームビルディングでは心理的安全性が大事だと言われるのです。
コロナ禍でテレワークが増えて分断が起こっています。どうなっていくのかわからない不安が渦巻いている中で、心理的安全性をどう扱っていけばいいのか、どうやって高めていけばいいのか悩まれているリーダー、上司、管理職の方も多いことと思います。
ここからは、心理的安全性を高めるためにリーダーができる3つのポイントをお伝えしましょう。
心理的安全性を高めるリーダーができる3つのポイント
1)失敗から学び合う
2)話を聴く
3)ルールや規範を明確にする
1)失敗から学び合う
組織/チームとして学び成長していくためには心理的に安全で、思ったことをお互いに話せるという状態がとても大事です。
組織として学ぶためには、失敗から学ぶことが欠かせません。
ところが、心理的安全性の低い職場やピラミッド型組織では、失敗の可能性がある行動を避けたり、失敗を隠そうとしたりする意識が働きます。
心理的安全性が低い状態を変えていくためには、失敗から学び合おうという姿勢や、チームの当たり前をリーダー自らが作っていくことが大事です。
例えば、リーダーが自分の失敗の話をし、そこに対してメンバーにフィードバックを求め、チームで学んでいこうという姿勢を見せることです。
強がったり、他の人より秀でていることを示すために能力を見せつけようとしたりするのではなく、誰もやったことがないことに取り組んでいる、あるいは新しいことに挑戦しているのだから、誰もが失敗をする可能性があるのだということを示しましょう。
失敗から学んでいくことによって初めて学習できるし、成長できるという姿勢を、日常の行動の中でリーダーが示していく必要があります。
また、わからないことを隠してしまうのも心理的安全性の低い場の特徴の一つです。
この場合は、リーダーもわからないことはわからないと伝えることが効果的です。
リーダーも全てわかっているわけではないし、完璧にこなせるわけではありません。
リーダーも失敗するし、みんなも失敗します。
失敗を非難するのではなく、組織として失敗から学習し成長していくことが大事です。それによって今は無い道が拓かれていきます。
失敗をオープンにしてそこから学んでいく姿勢が、不確実性の高い環境のなかの組織ではすごく大事です。
2)話を聴く
話を聴くことは昔から大切だと言われてきていますから、普段から傾聴を意識されている方も多いと思いますが、コロナ禍によって在宅勤務が増えた今、テレワークの人たちから「部下の状況がつかめない、わからない」という悩みをよく聞きます。
このような環境だからこそ、メンバー一人ひとりに耳を傾けることがものすごく大事になります。
「1on1」など、リーダーとメンバーが直接話す時間をもつようにしているリーダーも多いと思いますが、そのときに大切なポイントがあります。それは、「相手のために」話を聴く時間を持つということです。
失敗としてよくあるのが、「リーダーが根ほり葉ほり、メンバーに話させよう・聞き出そうとし過ぎて、むしろ相手を不安にさせてしまう」ことです。
部下にとっては上司に問い詰められているように感じることも起こりえます。
また、「リーダーが黙ってしまう」というのもよくある失敗です。
リーダーは普段は自分が話し過ぎてしまうからと自分が黙ることによって相手の話を聞こうとするのですが、メンバーにとってはリーダーが何を考えているかわからず不安になります。
話し過ぎはメンバーの話す時間を奪ってしまうのでNGですが、リーダーが何を考えているのかをメンバーに伝えていくことは必要です。きちんと自分の考えはこうである、ということを伝えたうえで相手に対して聞く耳をもつようにしましょう。
メンバーのあり方、考え方、価値観がリーダーとは異なることがあっても、仕事として組織の規範として間違っていない限りは、一人ひとり聞いてもらえる、受け入れてもらえているとメンバーが感じられることが大切です。
ところで、1対1で話をよく聞くことは「線」のコミュニケーションです。
テレワークでは、「面」のコミュニケーションが起こりにくくなります。
全体で話し合う場面では面のコミュニケーションを起こす聴き方を意識しましょう。
そのためには、リーダーも一人のメンバーとしてフラットに話に加わって、お互いに伝え、聞くようなカジュアルな場をもつことも有効です。
「話を聞く」ということは、相手は自分のことを分かってくれているという心の状態をつくっていくのがゴールです。
チームメンバーの話を聴くときには、メンバーが「リーダーは自分のことをわかってくれている」と感じられているかどうかを意識すると良いでしょう。
3)ルールや規範を明確にする
「ルールや規範を明確にする」とは、何がOKで何がダメなのかを明確に伝えるということです。
みんなが「何でもOK」「何でも許し合える」友達みたいな仲良しの関係が良い状態であると誤解されることも多いようです。しかし、心理的安全性の高い状態とはそういうことではありません。思ったことをきちんと対人リスクなく安心して伝えられるのが心理的安全の高い状態です。
ルールが無いことは不安を生みます。心理的に安全な状態をつくるには、ルールが何なのかがはっきりわかっている必要があります。
チームビルディングジャパンの例でご説明しましょう。
弊社はチームビルディング会社ですから、「チームで仕事をすること」を重んじています。
チームで仕事をしないことは、我々の規範からは外れます。
よって、チームを活かす行動は高く評価されますし、チームに対する配慮に欠ける行動は、規範から外れていることにより何らかのフィードバックを受けます。
会社にはバリューやルールに限らず、色々なところに規範がありますよね。
それを明示することで安心して行動できます。つまり、自由になれるのです。
どこに境界があるのかがわからないと、思い切って走り回ることができません。
どこに柵があるのかがわかれば、そのなかでは安心して、思い切って走り回ることができます。
自由に自律的に働くためには明確な規範が必要なのです。
規範を示すだけでなく、規範にのっとった行動が高く正しく評価される、規範に反する行動にはペナルティがあるなど、きちんと規範が生きていることを示すのも大事です。
規範が生きている状態をつくらないと、形だけでその効果は生まれません。規範を明確にすることが、安心して全力で仕事をすることにつながります。
まとめ
1)失敗から学び合い、成長につなげる
2)メンバーが、リーダーから理解されていると感じられるように話を聴く
3)何が良くて何がダメかわかって安心して動けるよう、規範を明確にする
現在のような不確実性の高い環境において心理的安全性を高めるために、今すぐにリーダーができるこれら3つのことをご紹介しました。ぜひ活かしてみてください。