第46回『テレワークのエンゲージメントを高める』
2020年10月29日
コロナの影響によりテレワークが増えているなかで、今、「エンゲージメント」が注目されています。
チームビルディングジャパンにもエンゲージメントに関するお問い合わせが多く寄せられています。
そこで今回は、
- エンゲージメントとは何か?
- リモートワークの環境でエンゲージメントがどれだけ下がっているのか?
についてお話ししようと思います。
エンゲージメントとは
まず、「エンゲージメント」とは何でしょうか。例えば、身近なところですと、婚約指輪を「エンゲージ(メント)リング」と言いますね。
エンゲージメントとは、「予定を確かにブロックして約束している」とか「人を雇う」という意味で使われる言葉で、確約した密なつながりを表します。
人事分野、経営・マネジメント分野では、「従業員エンゲージメント」という形で使われることが多いようです。
従業員エンゲージメントは、従業員と会社との間に強い関係性があるかどうかを指しています。
働く人が、仕事や組織に対して主体的な思いをもって率先して働いているのが「エンゲージメントが高い」状態です。
なぜエンゲージメントが大切なのか
なぜ従業員エンゲージメントが大切なのでしょうか。
これには大きく2つの理由があります。
1つは「エンゲージメントが高いと仕事のパフォーマンスが高い」ということ、
もう1つは「エンゲージメントが高いと離職率が下がる」ということです。
ここ何年かで、従業員エンゲージメント関連のサーベイがたくさん出ています。
有用な情報が手に入りやすくなった一方、あまりにも情報が多すぎて、本当に大切なポイントは何か、どこを見ればいいのか・・・と混乱してしまっている方もいるようです。
従業員パフォーマンスの調査研究などをグローバルに行っているADPリサーチインスティテュートのレポートによると、
世界各国を調査したところ、「高いエンゲージメントの人の割合は、全体の16%しかいない」という結果が出ました。
欧米だけでなくアジアや南米、中東など全て含めた世界中で高いエンゲージメントの人は16%しかいないというのです。
エンゲージメントは高い方が良いはずだと考え、みんなエンゲージメントを高めるための施策を打っている。にもかかわらず、その成果もむなしく現状世界中でエンゲージメントの高い人は16%しかいないのが実情であり、その他84%の人は、仕事だからただ出社しているだけというのです。
ここからわかることは、エンゲージメントを高めるために各社が頑張って取り組んでいる。しかし実際には、いまいちエンゲージメントが高まっていない・・・ということです。
ここに、2015年および2018年の調査結果のデータがあります。
2015年~2018年の3年間、日本に限らず世界中でエンゲージメントが意識され、様々な組織がエンゲージメントを高めるためのいろいろな取り組みをおこなってきました。
ところが、調査結果を見ると、高いエンゲージメントの人の割合はなんと、3年間でほとんど変わっていないのです。
頑張ってるはずなのに、数字が変わっていない。
これは何かおかしい・・・ということに、私たちは気付く必要があります。
今やっているエンゲージメントを高める取り組みは、果たして本当にあってるいるのか。
エンゲージメントを高めるにはこうすればいいと思っている、その理解はあっているのか。
今一度疑ってかかった方がいいでしょう。
テレワーク/リモートワークでエンゲージメントはどれだけ下がるのか?
例えば、現在感染症対策などでテレワーク/リモートワークが増えていますが、これでは「エンゲージメントが下がってしまいそう」という感覚を、多くの人が感じていると思います。
ところが、上記調査の結果によると、非常におもしろいことに、テレワークの人たちの方がエンゲージメントが高かったという結果が出ているのです。
(テレワークの方がエンゲージメントが高い人の割合が多く、出社している人の方が、エンゲージメントが高い人の割合が少ない、ということです)
ただ、「じゃあ今テレワークでみんなエンゲージメントが上がっているのか」というと、そうではない。
上記調査のレポートによると、出社することはエンゲージメントを下げます。
では、エンゲージメントを高める最大の要因は何かというと、「チームで仕事をしているかどうか」という点でした。
孤立して個人プレーで仕事をしているのではなく、チームで仕事をしているかどうか。
ここが、重要なのです。
ここでいう「チーム」というのは、組織図の1つの部署のことだけを指すのではありません。
プロジェクトの横断型チームや、短期で解散してしまう目的達成型のチームなど、組織図には表れないチームがエンゲージメントに影響しています。
従業員エンゲージメントは、組織図や組織構造に左右されるのではなく、チームから一番影響を受けている、ということです。
何か困ったことがあったり、トラブルが起こったたりしたときに、チームの誰かがカバーしてくれると感じられることが大切です。
なかでも特に上司との信頼関係が重要です。
リーダーを強く信頼している人は、普通の人に比べて倍くらいエンゲージメントが高いという結果が出ています。
「管理する」マネジメントから「活かす」マネジメントへ
テレワークになったことでチームの「管理」が難しくなった(あるいは逆に楽になった)と思っていませんか。
このようなリーダーは、チームのエンゲージメントを高める意味では失敗しています。
テレワーク/リモートワークのエンゲージメントが高い理由は、誰かにコントロールされるのではなく信頼できるチームで一人ひとりが自律的に仕事をすることができるからです。
ですから、リーダーはメンバーを「管理」するのではなく、一人ひとりが自律的に自分らしさを活かして活躍できるよう、リーダーはメンバーを支援する必要があるのです。
上記のような要因が、チームでのパフォーマンスを高め、同時に組織、会社へのエンゲージメントを高めていくという結果につながっているということが、調査の結果から見えてきました。
これはチームやエンゲージメントについてのありがちな勘違いに気づかせてくれます。
インセンティブでモチベーションを上げたらエンゲージメントが高まるとか、チームが仲良くなればチームビルディングできているとか、交流が大事だから社員同士の飲み会助成します、とか・・・そういうことではなく、
チームで仕事をしているということ、また、上司との強い信頼関係があることが、従業員エンゲージメントを高めるためには大切であるということなのです。
過去、エンゲージメント高めるために色々な施策を頑張ってきたけれど変化がないというグローバルレポートの結果から見ても、効果の出にくいところで頑張ってきたことが想像できます。
「テレワークでエンゲージが下がっていないか?」と気になって、出社したからといってエンゲージメントが高くなるわけではありません。
本当に効果の出るところでエンゲージメントを高める施策に取り組んでいく必要があります。
オンラインチーム/バーチャルチームを活かす
オンラインチーム/バーチャルチームはエンゲージメントを下げるどころか、むしろ一人ひとりが自分らしく活躍し、エンゲージメント高く仕事をするチャンスです。
私たちチームビルディングジャパンは、テレワーク/リモートワークで離れていてもチームで仕事ができるようサポートしています。
チームで仕事をすることによってエンゲージメントが高まり、それによって成果も上がり、離職率も下がって、みんなで「最高のチームだね」と言えるような、そういう組織を増やしていきたいと思っています。
参考文献
ADPRI (2019). The Global Study of Engagement Technical Report.