第41回『チームビルディングジャパン創業14周年を迎えて』
2020年08月20日
この度チームビルディングジャパンは創業14周年を迎えます。
今回は、チームビルディングジャパンの設立者であり社長である河村甚(じん)さんにインタビューしました。
今のチームビルディングへの思い、創業時の状況や思い、14年間のなかで印象深かった出来事、これからのチームビルディングジャパンについて・・・などをお伺いしていきたいと思います。
――まず、はじめに
コロナ禍中の今、じんさんがチームビルディングにかける思いをお聞かせください。
河村 甚(以下じん):今、コロナで環境が激変し、これまでの常識が通用しない世の中になっています。
正解が明確なときはそれをやっていればよかったけれど、今は何が正解かわからない。
正解が分からないときにも、チームの力で乗り越えることができる組織づくりを、我々はこれまでずっとやってきました。
未知の課題をに取り組む組織づくりは、チームビルディングジャパンの得意とするところです。
まさに今こそ世の中に役立てると思いますし、もっと役立たねばと思っています。
――2006年8月にチームビルディングジャパンは生まれました。
じんさんは、なぜチームビルディングジャパンを立ち上げようと思ったのですか?
じん:14年前創業した頃は、日本ではチームビルディングがほとんど知られていませんでした。
体験と対話を使った会社があるにはあったけれど全然メジャーではなかったですし、「チームビルディング」という言葉も知られておらず、今では冗談のような話ですが、名刺を出すと「チームビルディングジャパン・・・建築関係の方ですか?」と言われたりするような状況でした。
チームビルディングのやり方・考え方をもっと日本に伝え広めたい・・・そう思って創業しました。
――懐かしい・・・もう一昔前のことになるのですね。私もあの頃、「〇〇ビルディング」といえば「丸の内ビルディング」などを連想しました。
じん:私たちの提供するプログラムは、“正解”を持っている講師がいてそれを受講生に教えるという、よくある講義形式ではありません。
夢中になる体験や楽しい体験とそこからの対話を通じて自分の学びに変えていきます。
自分たちの体験や対話を通じて学ぶことはとても有効ですし、楽しい体験や夢中になる体験を共有することを通して、チームメンバーの関係性が良くなるよう直接的に働きかけることもできます。
自分自身あるいは自分たちの体験から感じ、自分も組織も成長していけるプログラムを提供する会社が当時日本にはほとんど無かったので、自分で会社をつくろうと思ったのです。
――チームビルディングジャパンを創業する前は、どのようなことをされていたのですか?
じん:チームビルディングジャパンをつくる前は、インセンティブイベントの会社で働いてました。
営業を頑張って結果を出した社員へのご褒美イベントを制作する仕事です。
クリエイティブで面白いパーティや表彰式を企画する仕事は華やかで楽しかったけれど、ご褒美のために押し売りをしていないか、成果を出すために他人を傷つけていないか・・・といったことが気になってしまって・・・。
ご褒美のために仕事を頑張ろうというのは本質的ではないのではないか。それよりも、仕事そのものに喜びや働き甲斐を感じて、外から与えられるご褒美ではなく、自分の内側のモチベーションで仕事をする方がみんなハッピーなはず。そういう仕事をしたいと思ってました。
――なるほど。
じん:何か人にやってほしい、行動を変えてほしいと思っても、人の心を無視するとだめだと思います。
人には心があります。心が動くから行動が変わるのです。心が動かなければどんなに論理的に正しいことを言っても行動は変わりません。
チームビルディングジャパンでは、この14年間ずっと、心が動く体験と本音の対話を通じて組織づくりをしてきました。
心が動くと、人は行動するものです。
組織改革などで行動変容を起こしたい場合に、「こういう理屈で、こう行動してくださいね、論理的に正しいでしょ」と研修で伝えたところで、なかなか変わりません。
本当に何か変化を起こしたいなら、頭ごなしに理屈を言われても人は変われません。心にアプローチすることで、本当に起こってほしいことが起こります。
心が動けば本気になるのです。
――創業時は、どのような状況でしたか。
じん:創業時は一人ぼっちでした。
チームビルディングの会社なのに一人でやっていることが、とても恥ずかしくて、早くチームを作りたいと思っていました。
自分たちが素晴らしいと思っているチームの力でチームビルディングを伝え広めるということをやりたかった。
あの頃はいろんな場に顔を出して、良い人に出会ったらすぐにアポイントメントをとって、
チームビルディングジャパンのメンバーを集めていきました。
当時は何も無くて、全て手探りでしたね。仕事も無かったし、プログラムも無かったし、お金も無かった。でも、チームビルディングを広めようという思いだけはあって・・・。
最初の頃集まったメンバーには随分助けられました。おかげで、チームもできて、プログラムもできて、仕事も増えてきて、無いものが形になっていきました。
――この14年間でどのような変化がありましたか?
じん:本当に何も無いところから頑張って、今はチームビルディングという言葉が当たり前になったのは大きな変化です。
当時は誰も知らなかった「チームビルディング」というものをここまで伝え広めてきた、という自負があります。
14年前は、「チームビルディング」という言葉がほとんど通じなかった。
一生懸命チームビルディングについて発信し続けてきた結果、社会が変わってきたのを感じます。
今や、チームビルディングジャパン以外の人たちもチームビルディングについていろいろ語っているし、本もたくさん出るようになりました。
――一番嬉しいと感じたことはなんですか?
じん:チームビルディング合宿などのプログラムの現場で参加者の気持ちが動いて、チームが変容していく様を目の当たりにすると、自分たちの仕事の意義を感じて嬉しくなりますね。
そしてプログラム後、スタッフチームで「いい仕事したね」と喜び合える。なんて有難い仕事なんだろうと思います。
――一番印象深い体験といえば?
じん:今の水道橋オフィスをつくったことです。これは象徴的でした。
自分が理想とするオフィスは、人が集まってコミュニケーションが起こる場。集まらなくてもどこでも仕事ができるけれど、集まりたくなるような場としてのオフィスです。
創業から何度か移転し、その度に少しずつオフィスが大きくなってきましたが、水道橋オフィスは初めて、人が集まりコミュニケーションを起こす場としてデザインしたオフィスです。
このオフィスでは、勉強会やイベントを開催したり、みんなで料理をして社内誕生日企画をやったり、コミュニケーションが起こる企画をたくさんやりました。
オフィスのレイアウトにもすごくこだわりました。インテリアデザイナーに実現したい理想のオフィス像を伝えて、家具を選んでもらいました。
このオフィスで起こしたいことをデザインして、実際にそういう場を形にすることができた。
創業当初、オフィス無い、仕事無い、お金無い・・・という状況からここまでこれたというのは
非常に感慨深かったですね。
――そのような思いのあるオフィスを、今回手放す決断をされましたね。
じん:はい。オフィスに行かないと仕事ができないという会社もありますが、チームビルディングジャパンはオフィスが無くても業務自体は問題なくできます。
このオフィスは「人が集まりたくなる場所」ですが、「人が集まらなくてはならない場所」ではありません。
場所に縛られず、自由にどこでも仕事ができる。けれど、オフィスに行きたくなる、集まりたくなる。チームビルディングジャパンのオフィスはそういう場です。
今、コロナによって、行きたくても出社できない、集まりたくても集まれない。そういう状況になってしまいました。
チームビルディングジャパンでは、元々出社しなくても好きな場所でどこでも仕事ができるように仕組みを整えていたので、コロナによる完全リモートワークにも問題なく移行できました。
今は誰もオフィスに行かなくても仕事が回っています。
私は、人が集まるオフィスが活用できない状況、人が集まる場に対して躊躇するこの状況が、あと2年ほどは続くと考えています。
「人が集まること」を目的にしたオフィスなのに、コロナによって人が集まれない状況になってしまった。
それなら、人が集まれないオフィスの家賃を払うよりもその分を人件費等に充てる方が賢明な選択だと判断しました。
――人が集まることを大切にされつつも、環境の変化に合わせて柔軟に対応されているのですね。
今後、どうなっていくと思われますか。
じん:オンラインではなく対面で接触することの価値が、むしろ見直されるようになると思います。
近い距離で顔を寄せ合い、模造紙を囲んでたくさん話すことや、身体接触を伴うアクティビティなど、チームビルディングジャパンの「得意技」はコロナで全て封じられてしまいました。
でも、強制的にテレワークとなっている人たちの多くが対面で人と密に関わることの必要性を感じています。
今は密だからと封じられている「得意技」の価値を多くの人が感じている。
しばらく先になってしまうとは思いますが、コロナが落ち着けば、みんなから絶対求められるはずなので、その時にチームビルディングジャパンのサービスを求める人にきちんと届けられるようにしておきたいですね。
――同時に、新しいサービスも始められていますね。
じん:コロナは1年では終わらないと思っています。
2年以上続いていく可能性があると想定しているので、コロナが終わるまで耐えればいいとは考えていません。
耐え忍ぶ戦略では生き残ることすらできない。
チームビルディングジャパンの「得意技」が全て封じられてすぐに、オンラインでできる体験と対話のプログラムを整え、リリースしました。
「チームで力を合わせて一丸となって取り組むアクティビティをオンライン上でやるなんて、そんなことできるのか?」と思われるなか、まさにチームの力でプログラム開発を進めました。
オンラインで何かできないかと困っている担当者さんからたくさんのお問い合わせをいただいています。また、すでにオンラインでのチームビルディングプログラムを各社でご導入いただいています。
――オンラインのチームビルディングプログラムは好評のようですね。
じん:まずは「オンラインでチームビルディングプログラムを実施したい」という皆さまの要望に応えるプログラムから始めました。
今はさらに進んで、「オンラインのチームの問題を乗り越えるプログラム」に力を入れています。
単発のチームビルディング研修ではなく、チームの日常の小さな取り組みを支援し組織文化を醸成していく、チームのコーチとして伴走してゆくプログラムです。
この環境下だからこそ、これまで私たちが培ってきたノウハウが多くの組織の役に立つと考えています。全てオンラインで実施可能です。
このプログラムでは「一人ひとりの日常の小さな行動の繰り返しが組織をつくる」ということを特に大切にしています。
「ご褒美をあげるから頑張れ」でも「これが正しいからこれをやれ」でもなく、「一人ひとりの組織を良くしていきたい気持ちから生まれる小さな改善の積み重ね」。これが組織づくりの肝になります。
一つひとつは小さな行動だけれど毎日継続し、どれくらいできたか振り返り、定期的に専門家のサポートを受ける。
実は、医療の分野ではダイエットなど、体質改善のために生活習慣を変えていく方法として、これと全く同じことが行われています。
この方法は組織づくりにも有効で、チームの習慣改善がチームの体質を改善します。
チームを一つの生き物として捉え、その日常の行動習慣を改善することでチームの体質改善を行う。これは過去に行われてきた組織をパーツの組み合わせでできた機械として捉え、故障を修理するような組織開発の手法とは異なる新しい組織づくりの手法です。
――有機的な組織づくりですね。
じん:組織づくりをする際に「チームの問題は組織構造から起こっている」と言われると、自分には組織は変えられないと思ってしまう人も多いのですが、組織の文化は一人の行動から変えることができます。
自分たちの日々やっている小さな行動が変わっていけば、組織の中に新しい当たり前が生まれるのです。
今、テレワークや出社メンバーとテレワークメンバーが混ざった組織などでの困りごとが多く起こっています。
日常の習慣改善の方法は(すごく地味ですが)とても効果があります。
先の読めない環境の中で組織を良くしていくためにどの組織も取り組むべきことだと考えています。
新しいプログラムは100%オンライン実施可能にしましたので、必要とする多くの人に届けていきたいですね。
――最後に一言お願いします。
じん:今、先が読めない環境の中で、何がどうなっていくか誰にもわからないけれど、そんな環境だからこそ私たちの培ってきたチームビルディングで社会の役に立つことが出来ます。
こんなに多くの組織が苦しんでいる時こそ、私たちはその救いや希望でありたい。
「働く人たちが自分の働く場でHappyに」というミッションのもと、私たちだからこそできることで社会の役に立っていきたいと思っています。
――ありがとうございました。
これからの1年、チームビルディングジャパンとしても変化の年になりそうですね。
来年は15周年。ますますの発展を楽しみにしています。