第33回『テレワークと、人を活かす組織づくりの関係』
2020年04月30日
2017年に始まった「テレワーク・デイ」からテレワークを推進する動きが加速し、その後「働き方改革」で働き方の多様性が広がっています。
最近では「働き方を変えていこう」という取り組みとは別に、新型コロナの流行によって、非常時に各自が在宅でも事業を継続してゆく手段としてテレワークが一気に広がりました。
この機会にテレワークを始めた会社も多く、今とてもテレワークが増えている状況です。
実は、この全員がバラバラの場所で仕事をするテレワークというのは、個の力を超えてチームの力を発揮するチームビルディングにもとても有効です。
今回は「テレワークはチームビルディングに有効である」という話です。
チームビルディングジャパンでは、2007年から10年以上テレワークに取り組んでいます。
「働き方改革」も「新型コロナ流行」も無い状況で、なぜテレワークを導入し、これまで続けてきたのか。
それは、組織作りにとってテレワークが必要だからやってきたのです。
以前は「テレワーク」という言葉もそんなに使われていませんでした。
2017年の「テレワーク・デイ」あたりから、テレワークという言葉が広まってきましたが、10年前は「リモートワーク」と言っている方が多かったのではないかなと思います。
なぜテレワークがチームビルディングに有効なのかというと、「チームで一つになって成果を上げていく」チームビルディングには、メンバーの一人ひとりの多様性がものすごく大事だからです。
同じ黒い色の鉛筆がたくさんあるのではなく、
いろんな色鉛筆があって、
短い鉛筆や太い鉛筆があって、
違うカラーがある・・・
そのような異質なものの集まりによってチームをつくる方が、環境の変化に強い、あるいは先の未来に強いチームになっていくのです。
社会が安定的で、変化が少ない場合には、その環境のなかで生き残れるチームをつくっていけばいいので、同質なチームの方が、余計なことがないため効率的に生き残っていけます。
しかし、チームビルディングジャパンは、不確実な未来を切り開いていくような組織をつくっていくために多様なメンバーが集まった組織づくりを大切にしています。
多様な人たちが働くことを大事にしたときには、その一人ひとりが自分らしく働けることが
とても大事です。
仕事用の自分を取り繕って、
仕事用の着ぐるみを着て、
自分じゃない自分で、
仕事の場の自分を演じて頑張っている
・・・ということではなくて、
自分らしい自分のまま、
自分のちょっとポンコツな部分も含めて出して、
その全てを活かして
仕事のため、あるいは組織の結果のために活かしていく
・・・ということが大事であると考えています
これが、多様性を活かしたチームをつくることのポイントです。
人の力を活かす観点で考えたとき、働き方には2種類あります。
一つは、人間を業務内容に合わせる、「人を仕事に合わせる働き方」。
もう一つは、メンバーがどう仕事のなかで活きるかに目を向けた、「一人ひとりを活かす働き方」です。
1つずつ詳しく説明していきましょう。
人を仕事に合わせる働き方
まず、「人を仕事に合わせる働き方」とは、「ここにこういう仕事がありますよ」「求められるスペックはこうですよ」「こういう能力を持っていてくださいね」ということが先にあり、そこに人を合わせていく組織での働き方のことです。
自分らしいとか、自分らしくないとか、そういうことは一切関係ありません。
「仕事なんだから」と会社に、仕事に人を合わせます。
仕事で求められる能力、スキルに合わせて、「こういう能力を自分は持っています」とアピールし、仕事に就くことが多いでしょう。
このタイプの会社では、仕事で必要とされる能力について、例えば「研修でパソコンをこれくらい使えるようになってください」「英語をこれくらいできるようになってください」というような会社の求める条件に自分を合わせていかなくてはならないだけでなく、働き方も会社の都合に合わせさせる傾向があります。
例えば、ものすごく才能があっても、育児や介護の都合で、出社はできない人がいたとします。
「在宅勤務なら仕事ができるんだけど・・・」「この時間帯なら仕事ができるんだけど・・・」と言われても、
人を仕事に合わせる会社では、優秀な人を活かすことができません。
なぜなら、会社の都合で、その人を使うことができないからです。
会社の思う通りに、
転勤もしてほしい。
勤務中はずっとオフィスに居てほしい。
管理するためには目の届くところにいてほしい。
これでは、その人にどんなに才能があっても、その才能を活かすことはできません。
そういう才能のある人たちは、どうなるでしょうか。
しょうがないからフリーランスになっていく人が増えてきましたよね。
フリーランスだったら、その人の才能を活かしてその人らしい働き方ができるからです。
でも、本当は、フリーランスにならなくったって、同じことを正社員でもやっていいんです。
フリーランスにならないとできないと思っていた働き方を、会社が、正社員としてできるようにしていいんです。
一人ひとりを活かす働き方
「一人ひとりを活かす働き方」は、その人らしさをどうしたら仕事に活かせるかを考えます。
会社の枠に合わせると、本来その人が持っている強みが消されてしまうこともあります。
そうではなく、「人は誰しも強いところも弱いところもある」と考え、公も私も合わせた、ホールネス(全体性)を仕事のなかで活かしていくことが、すごく大切です。
元々想定されたフレームの中での仕事で収めるなら、人を仕事に合わせても構いませんが、
未知の課題で成果を上げるためには、一人ひとりを活かすことが効果的です。
もちろん、組織にはいろんな面があるので、人を仕事に合わせることもしなくてはならないし、一人ひとりを活かすこともしなくてはならない。両方しなくてはならないんですけれども、「会社に人を合わせることが当たり前」に偏りすぎていると、柔軟に対応できなくなってしまいます。
この時代に求められる人材とは
2種類の働き方がある、ということがわかったところで、今の時代にどのような人材が求められるのかについてお話しします。
今は、環境の変化・技術の進歩がものすごく速い時代です。
5年後の未来が読めないどころか、3年後すら、いや1年後もわからないという状況です。
まさにいま、コロナ危機がいつ終わるのかわからないこのような状況のなかでは、会社でよくある中期計画や、5カ年計画を立てても、会社の計画通りには世の中の方が進んでくれません。
ある程度未来を予測して、実現したい姿を描いて頑張っていくことはもちろん大切かもしれないけれども、中期計画すらも「5年前こんなこと言ってたの」と古くなってしまうような環境のなかでは、この不確実な未来を切り開いていく人材が必要になっています。
会社で立てた計画が役に立たなくなってしまうような環境で未来をつくっていくには、
会社の思惑にはまった人材ではダメ。枠から外れた人が必要です。
会社の中の枠のなかで働くのではなくて、自分らしく働けることが人を活かしていくことになります。
その一環として、働く場所を選ばない、テレワーク、リモートワークが生きてくるのです。
形としてテレワークを導入するだけではダメです。
「働く場所が自由である」「時間が自由である」「その人がその人らしく働ける」・・・そのためのテレワークであることが重要です。
仕事の合間に子どもの世話をしてもいいし、介護をしてもいいし、家事をしたっていいし、途中でちょっと休憩してジムに行ったっていい。
その人がその人らしく、公私混同して働けることによって、パフォーマンスが上がるのを実現していくことが大切です。
例えば、子どもの世話があるから仕事はできない、と思っていた人たちを活かすことが必要です。
多様な人たちを掛け合わせて、活かし合っていいチームをつくっていくことがこれからの時代はますます大切になっていきます。