第26回『リフレクション』
2020年01月23日
組織づくりと人づくりに必要な9つの要素
【 組織を一つにするもの 】
●自分たちらしさ
●目標、ビジョン、ゴール
【 ベースとなる組織文化 】
●心理的安全
●多様性と受け入れ合い
●主体性
【 組織として学び、進化し続けるための行動 】
●失敗や異色な発想を受け入れる
●混ざり合いを起こす
●行動量やコミュニケーション量を増やす
●リフレクションを行う
――組織が学び、進化し続けるための行動の要となる「リフレクション」についてお話をうかがいます。
河村 甚(以下じん):リフレクションとは、「自分たちのやっていることを、一回立ち止まって客観視して振り返り、その意味を捉えて次の行動や判断に反映させる」ことです。
反省会のようにただ振り返るだけでなく、「そこにどのような意味があったのだろうか」「どう捉えたらいいのだろうか」ということを立ち止まって捉えます。そして、次の行動や判断に反映をさせていく。これがリフレクションです。
仕事では「PDCA」が大切だとよく言われます。すでに実践している方も多いことでしょう。
でも、目の前の作業に追われていると、立ち止まってチェックすることなく、Plan→Do→Plan→Doと繰り返してしまっている・・・ということはありませんか。
忙しいと活動を振り返って次の行動に反映させることをせずにとにかく次に突き進んでしまうということが起こりがちです。
しかし、それでは学べないし、進化できません。
自分たちがやっていることをきちんと振り返って次に反映させることによって、組織として学び、進化していくことができるのです。
――どうしたら学び進化していくような、効果的なリフレクションができるのでしょうか?
じん:リフレクションのやり方はたくさんありますが、やり易いところから始めるとすれば、
まずは、プロジェクトや日常の仕事の節目節目にリフレクションの機会を設けるとよいでしょう。
例えば、営業の仕事であれば、一日の仕事が終わった後、日報に整理し、それをもとにチームで振り返る。これもリフレクションです。
毎日チームで集まって話し合うのは時間的・空間的に無理だという場合でも、1週間に1回くらいはチーム内で「今週はどうだった?」という話をすることをお勧めします。
もちろん個人でリフレクションを行うことも有効です。
でも、チームで行うことで、違う視点でフィードバックし合えたり、新たな発想が生まれたり、他のメンバーの経験から学べたり・・・とたくさんのメリットがあります。
――「やってみてどうだったか」ということを、みんなで話すことから始めてみればよいのですね。
じん:そうです。活動を振り返ってやってみてどうだったか、そのときに感じたことをざっくばらんに話し合ってみてください。その際、振り返るベースとなる日報やレポート、写真や記録等があるとなお良いでしょう。
「これ、良かったよね」という良い点が次々出てくるチームもあれば、「これ、残念なだったね」「うまくいかなかったね」と、反省点ばかりが出てくるチームもあります。
良かったところや継続していきたいところをたくさん出しつつ、問題点や改善点も合わせて出すとよいですね。
その上で、「これは継続していこうね」「これは改善したいね」「じゃあ、次どういう風にしていく?」というように、次の行動を抽出していきましょう。
次にやるべきことが見えれば、行動が変わっていきます。単純な行動の改善以外の新たな気づき、アイデアも生まれてきます。そして、じわじわと組織を進化させることにつながっていくのです。
――導入しやすい方法として、節目にリフレクションの機会をつくることをまず紹介していただきました。
その他にはどのような方法があるのでしょうか。
じん:実は、リフレクションはあらためて機会を設けなくても、日常の中で小さくたくさん行うことができます。
組織の中の3人程で集まって、今取り組んでいることについて話し合うというようなことです。
最初は難しいかもしれませんが、慣れてくると、日常のコミュニケーションの中に、自然にリフレクションを取り入れることができるようになります。
例えば、「ちょっと今うまくいってないんじゃない?」と誰かが発し、「たしかにそう言われるとそうだね。ちょっと引いてみるとこういうことだよね」と俯瞰し、その意味を確認し、「じゃあ、だったら次はこうしてみようか」と行動を決める。
このように、時間にして3分間くらいの短いリフレクションを、話し合いの中で自然に行うことができるようになるでしょう。
――リフレクションは特別なものではなく、日常的に、気軽に行えるものなのですね。
じん:はい。リフレクションの習慣がついてくると、日常のなかで、「あれ?」と思ったときや「あ、今、感情が動いてるな」というタイミングで自分たちの行動に対して振り返りができるようになります。
日常的なリフレクションのポイントは、ちょこちょこと関わり合い、小さなコミュニケーションを取ることです。
感情が動いたその時に、その場でお互いに聞き合うことは、組織作りにとても効果があります。
――リフレクションを行う際に、効果的な問いかけというのはありますか?
じん:チームビルディングジャパンの研修プログラムの中では、体験型のアクティビティを「やってみてどうだった?」という問いからリフレクションが始まっていきます。
アクティビティを体験して気持ちが動き、話したい事がたくさんある状態をつくったうえで、「やってみてどうだった?」と質問を投げ、お互いに話を聴き合うのです。
さらに、「どのようなことが起こったのか?」「何をしたのか?」などについて話しているうちに、本人の中で感情がつながってきます。すると、「やってみてどう感じたのか?」「どう楽しかったのか?」という話も自然に出てきます。
リフレクションで相手の気持ちを引き出すのが難しい場合には、まず「起こったことや経験したこと」、次に「そこで感じたこと」と段階を踏んで掘り下げていくとよいでしょう。
――最後にまとめをお願いします。
じん:慣れるまでは、何かの節目にリフレクションの機会を設けて実施することが必要かもしれません。しかし、立ち止まって振り返るということに慣れてくると、日常業務の中でリフレクションができるようになっていきます。
小さな行動をスピード感を持って行い、その合間に自分たちを客観視して、経験したことの意味を捉え、次の行動に反映させていく。
このようなリフレクションを取り入れていくことで、より継続的で速い進化や学びを起こしていくことができます。