第21回『主体性(理論編)』
2019年11月14日
組織づくりと人づくりに必要な9つの要素
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【 組織を一つにするもの 】
●自分たちらしさ
●目標、ビジョン、ゴール
【 ベースとなる組織文化 】
●心理的安全
●多様性と受け入れ合い
●主体性
【 組織として学び、進化し続けるための行動 】
●混ざり合いを起こす
●失敗や異色な発想を受け入れる
●行動量やコミュニケーション量を増やす
●リフレクションを行う
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「主体性」とは、一人ひとりが自分の頭で考えて行動するということです。
チームメンバーに主体性を望む声は大変多く聞きますし、チームビルディングジャパンのプログラムでも主体性をチームの成果に影響を与える重要な要素として扱っています。
しかし、主体性が重要なのは分かっていても、なぜ主体性があると組織にとって良いのか、なぜ主体性が必要なのか…ということは意外と説明できなかったりしませんか。
今回は主体性の理論編です。今回は以下5つの考え方をご紹介します。
■ティール組織の自主経営
フレデリック・ラルーのティール組織(Reinventing Organizations)で自主経営(セルフ・マネジメント)という概念が語られています。
ここで言うセルフ・マネジメントとは、一般的に使われている自己管理といった意味合いとは違います。
働く一人ひとりが目の前で起こっている変化に自分で判断し、対処するといった意味で使われています。
ピラミッド構造の組織では上司の判断を仰がないと決定できないことだらけです。
ティール組織では「会社」や「上司」が決定するものではなく、自分で(自分たちで)判断します。
上司や会社に依存している状態は、主体は自分にはありません。あくまで会社や仕事を動かす主体は自分(自分たち)です。
ティール組織では、自主経営は権限移譲とは異なるものであると述べられています。
権限を持っている人がそれを下に分け与えるという権限移譲の構造とは全く違うということです。よく、上司が部下に経験のために「やらせてあげる」ことがありますが、そういうことではないのです。
自主経営は慣れない人にとっては最初は苦しいことかもしれません。なぜなら、自由は責任を伴うからです。
難しい判断を誰かに丸投げすることはできません。上司や会社の愚痴を言っていれば誰かが解決してくれるということも無いのです。
しかし、これは急速な学習成長の機会ともなります。
一人ひとりが主体となって、目の前で感知した変化に対応し、その集合で組織が生き物のように進化して行きます。生物のコロニーと同じ構造です。
■ホラクラシー
ホラクラシーとは、従来のピラミッド型の組織構造のように役職が上の人に依存するのではなく、ロール(役割)を構造化して運営する属人性を排除した組織形態です。
ホラクラシーでは明確にルールやロールが定義されていて、それに則って全員が行動します。
一人ひとりがそのロール(役割)に応じた判断をします。
自分が感知したことに自分で判断して対処することが一人ひとりに求められています。
ホラクラシーのルールで面白いのが「ルールを破るためのルール」があることです。
それは「個別行動」と呼ばれ、一定条件を満たしたときに個々が感知したことを他者の役割を侵害してでも行動することがルール化されています。
それくらいホラクラシーでは、個々が感知したものに基づいて判断し行動することが大切にされているのです。
■有機的組織、機械的組織における主体性
有機的組織、機械的組織のどちらのタイプの組織でも「もっと主体的に頑張ってほしい」と言います。しかし、両組織では求められる「主体性」が異なります。
機械的組織では、会社から与えられるタスクを忠実にこなすことが求められます。ですから、「自分で考えて行動する」といっても、その意味合いがすごく小さい。小さい範囲の中で、自分で考えて行動することが求められています。
一方の有機的組織は、一人ひとりが個として立っており、個の「らしさ」を活かしていくことが大事です。自ら組織に働きかけていく、広い範囲に自ら関わりかけていく主体性が、有機的組織では組織構造的に欠かせません。
■「社会人基礎力」(経済産業省)における主体性
社会人基礎力は、これから社会に入っていく新人に求められるベーススキルです。
この社会人基礎力の1つに、「主体性」があります。
(社会人基礎力は新人のときだけでなく、その後もずっと必要とされるスキルです)
チームビルディングジャパンのお客様からも、「自ら考え行動する若手を育てたい」というご要望は非常に多く寄せられます。
主体性をもつこと、他人事にしないということが結果に影響する場面は、我々が実施するチームビルディングプログラムの中でも数多く起こります。
チーム課題に取り組むなかで、率先行動やイニシアティブをとる行動がどれだけ出てくるかは、チームの成果に影響を及ぼします。
■『学習する組織』(ピーター・センゲ)における主体性
『学習する組織』の中の「自己マスタリー」も主体性に関わるものです。
自分できちんと目的意識を持って、今の自分から、ありたい自分になる。
内側から生まれてくるモチベーションを持っており、それが組織の活動と関連していて、組織の目標のために頑張ることができる。
そんな内発的動機を持っている人が集まることによって、組織が「学習する組織」になっていく。そのためにも主体性が大切だといわれています。
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以上、5つの考え方をご紹介しました。
「主体性」という言葉はよく耳にするけれど、分かりにくいものです。
ピラミッド型の上下関係では、上司が部下に「自分の思うようにやってみろ、もし失敗しても俺が責任取るから」といったやり取りがよく起こっています。
一見、部下の主体性を尊重するように聞こえますが、これは主体性とは違います。これでは依存関係を増幅させるだけです。
失敗の責任は上司が負うものではありません。成功させる責任をメンバー一人ひとりが負うものです。もちろん助言や助け合いはたくさんしたらいい。しかし、同時に一人ひとりが結果を出すことに責任を負える主体性が大切なのです。