第3回『今、なぜフラット型組織か?(後編)』
2019年03月07日
(「今、なぜフラット型組織か?」前編はこちら)
河村 甚(以下じん):
今、色々な仕事が、AIや、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などの
仕組みでできるようになっていますし、ますます進化していくでしょう。
業務を効率化していくなら、当然その流れになりますし、
人口が減少し、労働人口が減っていくということを考えても、
そういったことの必要性がより高くなっていくことは間違いありません。
そうなるとどうなるかというと、
答えがわかっているような仕事、つまりピラミッド型で解決しやすい課題は、
人間がやるよりも機械にやらせた方がいい、という流れが加速していきます。
――ピラミッド型の仕事はどんどん無くなっていく、と。それでは、機械にはできない、人間だけができる仕事とは何なのでしょう。
じん:そうですね、機械は「考えること」は人間より優秀かもしれませんが、
「感情が動くこと」「想像すること」は人間の得意分野だと思います。
感情が妨げになって人間にうまくできない仕事もあるかもしれませんが、
感情があるからこそうまくいく仕事があります。
仕事って、頭を使ったり体を使ったりするものに見えますが、実は心も使っています。
分かりやすいのは、
ホスピタリティ業界や医療、看護、介護などの
人が人に直接サービスを提供する仕事。
それはサービスを受ける側に感情があり、
その感情の状態がどうであるかが
仕事の結果に直結しているからです。
心がこもったサービスは相手に伝わり、
相手の心の状態に好ましい変化を与え、
それが仕事のより良い結果となります。
そう捉えると、人と人とのつながりで出来ているこの社会の仕事のほとんどは、
実は感情を使った仕事という見方も出来ます。
となると、人と協働して成果を出す時には、
お互いの感情を感じ合いながら活かしあえるという事が重要になってきます。
ーーたしかに、感情や気持ちは重要ですよね。
人はただ教えられても行動につながらないけれど、
心が動くと行動につながります。
じん:ただ速く走れと言われても限界がありますが、
「アイツに勝ちたい!」という感情を持つと
頑張って練習したり
ただ社会を良くするために寄付をお願いします
と言われても寄付しないかもしれないけれど、
貧しい国の子供の笑顔の写真を見せられると
「この子の笑顔のために」と寄付したり。
そして何より人間の感情に影響を与えるのは
他の人間の感情です。
感情は他の人の感情に影響をあたえ、つまりそれは
他の人の行動にも影響をあたえています。
「アイツも本気だから自分も頑張る!」
「この子が幸せだと自分も幸せ」
そういった感情のやりとりが
人の集まりである社会を動かしています。
ーー心が動くことが、結果的に社会を動かすことになるのですね。
じん:想像することは、
実現したいビジョンを描くことや
現時点から飛躍したところにある技術革新などを
生み出す原点となります。
何か新しい研究を始めるときのデータ分析などは機械が得意ですが、
どのような研究をするかを決めるのは、想像力と感情を持った
人間がする仕事だと思います。
―― これからの働き方にも影響がありそうですね。
じん:そうですね。社会的にみても、より個が大切にされるようになってきていますし、
一人ひとりが自分らしい生き方・働き方を求める流れが大きくなっています。
企業が優秀な人材を確保する上では、
個を大切にしていかないと、働き手が確保できません。
例えば、テレワークに代表されるように、
時間に縛られない働き方、場所に縛られない働き方ができるようになる等、
働き方は今以上に多様になっていくでしょう。
仕事は、自分の時間を犠牲にしてその対価をもらうものではなく、
仕事そのものを通じて、働きがいや自分の社会の中での存在意義を実感できるものである
という捉え方が普及していくはずです。
ワークとライフはバランスを取るものではなく、
融合したものになっていきます。
―― 働き方という点で考えたときに、ピラミッド型組織とフラット型組織にはどのような違いがあるのでしょうか。
じん:ピラミッド型組織は、「人を管理をする」という考え方です。
自分の時間、労力を犠牲にして、その対価としてお金をもらうという働き方ですね。
管理する側としては、働く人にさぼられないように管理します。
そこには「仕事は嫌なものだからなるべくしたくない」という前提がある。
「管理していないと、働き手はさぼろうとするはず。さぼらせないためには、時間できっちり管理すべきだし、目の届くところで管理しなくてはならない」という考えです。
一方、働く側としては、「会社は搾取するものである」という前提がある。
だから、会社に搾取されないように自分を守ろうとします。
このような構造が存在するので、
ピラミッド型の会社は管理しないとうまくいきません。
ーーなるほど。
じん:フラット型組織は、そういった管理とは別次元の考え方で動いています。
いかに部下を管理するかではなく、
いかに一人ひとりがキラキラと輝いて、イキイキと仕事をするか
ということを考えてマネージメントしている。
「全員平等に」ではなくて、一人ひとりを特別扱いするのがフラット型の人材マネジメントです。それぞれの特性や事情はみんな違うわけですからね。
その時重要なのは、その人がその人らしく働けるかどうか、ということです。
時間や場所で人を拘束し縛るのではなくて、
一人ひとりが、その人らしい働き方、その人らしい仕事をすることが
フラット型組織では可能です。
新しい働き方が求められている現在の状況と、
フラット型組織の働き方は、マッチしています。
――フラット型組織の良さをいろいろとお話しいただきましたが、
ピラミッド型組織が変化することは可能なのでしょうか。
じん:環境の変化に、組織は適応していかなくてはなりませんが、
今あるピラミッド構造の組織を全て崩して
ゼロからフラット型の組織を作るというのは、現実的ではありませんよね。
組織文化を根底から作り変えることになってしまうのでそう簡単にはいきません。
だから、フラット型の要素で必要だと思われるところを少しずつ取り入れながら
時と場合によってうまく使えるようになっていけばいいと思います。
例えば、「会議の無駄を減らしてフラットに話し合える会議にしたい」などといった
日常で必要としているところから少しずつ要素を取り入れていけばいい。
フラット型組織を作るための要素は明確になっていますから、
ピラミッド型を壊さずに、今の組織にフラット型的な要素を少しずつ取り入れていくことが可能です。
次回以降、フラット型組織を作るために必要な要素についてご説明していきます。