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第25回『不便益とは?ー便利を追求してきた時代から不便を楽しむ時代へ』

2024年02月22日

社会の変わりゆく様子は、静かでありながらも確実に私たちの生活の中に溶け込んでいます。これからも、私たちは想像を絶する速さで変化していく世界に適応していかなければなりません。しかし、この変化を前向きに捉えることは、私たち一人ひとりの意識に深く根ざした無意識のバイアスによって、しばしば難しくなります。現状がずっと続くという安心感にしがみついてしまいがちですが、実はその安心感こそが、私たちを進化から遠ざけるかもしれません。

地震のような不測の事態を例にとっても、そのリアルな実感がわかないままに生活している私たち。しかし、社会に起こる大きな変化は、そんな安心感を揺さぶり、不確実性の高い社会へと私たちを導きます。経済成長のパラダイムが変わり、人口減少が進む中で、私たちは何を大切にしていくべきか、深く考える必要があります。

これまでの社会は、便利さと効率化を追求することで成り立ってきました。生活を楽にするためのさまざまな発明―洗濯機、食洗器、お掃除ロボット、そして最近では生成AIまで―は、私たちの生活を豊かにしてきました。これらの便利さが経済成長を牽引してきたのは事実ですが、その一方で、私たちは何か大切なものを失ってきたのではないでしょうか。

街灯が夜空の星や蛍の光を遮るように、便利さがもたらす「害」にも目を向けなければなりません。便利さの追求が、かえって私たちの生活から何かを奪っていることに、ふと気づく瞬間があります。例えば、手間暇かけて作る料理の喜びが失われがちな現代。このような便利さの中にある「便利害」に気づき、改めて「不便益」の価値を見直す時が来たのかもしれません。

不便さの中にも、時間をかけることの喜びや、手間をかけることの豊かさがあることを私たちは再認識し始めています。キャンプでわざわざテントを張り、水を汲み、ファイヤースターターで火をつける。このような不便さを楽しむ遊び心は、私たちが本来持っている、すべてのものに対するリスペクトや、小さな喜びを見つけるセンスを思い出させてくれます。

太陽の光の温もりや、風のささやきに心を動かされるような、豊かな感性を取り戻すこと。それが、これからの社会で大切にしていくべきことかもしれません。時短の便利さを否定するわけではありませんが、便利なことをすべて便利にしようとせず、不便さの中にある小さな喜びや豊かさを見出すことの重要性を、新たな視点で捉え直す必要があります。

家事代行サービスを利用することで得られる便利さと、自分で家事を行うことの中に見つけることができる小さな喜びや達成感。このバランスを見つけることが、より豊かな生活への鍵かもしれません。私たちが遊びや趣味として大切に育んでいくことで、社会の変化に対応しながら、経済成長だけではない、新たな幸せの形を見出すことができるのです。

不便さの中に隠された価値を再評価し、便利さだけがもたらす豊かさに疑問を投げかけること。それは、私たちが日々の生活の中で意識的に選択し、価値を見出すことができる豊かな時間の使い方かもしれません。例えば、手作業による料理の時間を大切にすることで、食事の準備という行為がもたらす家族との絆や、食材への感謝の気持ちを深めることができます。

このような日々の小さな選択が、私たちの生活をより意味深いものに変えていく。私たちは、便利さの追求だけでなく、不便さの中にある豊かさや、小さな喜びを見つけることによって、より充実した人生を送ることができるのです。社会の変化に対応する中で、経済成長だけではない、新たな幸せの形を見つめ直すこと。それが、これからの私たちにとっての挑戦であり、新たな可能性を切り拓く鍵となるでしょう。

不確実性の高い時代を生きる私たちには、変化を恐れず、それを受け入れ、適応していく柔軟性が求められます。経済性や効率性、便利さを追究するだけではなく、不便さの中にも喜びや豊かさを見出すことで、私たちはより豊かな人生を築いていけるのではないでしょうか。私たち一人ひとりが、日々の生活の中で意識的に選択し、価値を見出すことが、これからの社会で幸せに生きるための鍵となるのです。

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