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第97回『チームビルディングは楽じゃない(5)チームビルディング・バイブル』

2018年12月13日

チームビルディングの話をしよう
2015年4月から始まった連載コラム「チームビルディングの話をしよう」では、
代表河村がチームビルディングを切り口に
さまざまなテーマでいろいろな人と話し合った様子をお届けしています。
 
◇今回の対談のお相手は・・・
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飯島 邦子 氏 (組織開発ファシリテーター プロセスデザインコンサルタント)

元IT系。システム構築プロジェクトのマネジメント経験で、やっぱり人だと気づいて方向転換。ファシリテーションと出会う。2011年独立、PROCESS Laboratory主宰。ファシリテーションを軸にNPO支援や中小企業の組織活性化や研修事業をしつつ、持続可能な開発のための教育(ESD)を推進するコーディネーター育成プロジェクトに関わる。2016年からは㈱ジョイワークスにも参画し、現在は、個人事業・企業活動・NPO活動という3つの器を通して、人と組織、そして社会の持続可能性の探求を軸に活動中。
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飯島 邦子さん(以下くに)
意思をもって”広める”って、ファシリタティブにやるのが難しくないですか?
なんか恣意的に引っ張る感じがあるような・・・。

河村 甚(写真、以下じん)
それは引っ張っていいんじゃないかと思うよ。

くに
引っ張っていい?

じん
うん、そこに「引っ張っていく意志」があるんだったらね。

つまり、明確に実現したいことがあって、それがある環境においての一つの正解なら、
それを伝え広めていくためには、ピラミッド型で引っ張っていい、と思うわけですよ。

くに
なるほどね。

じん
だけど、ピラミッド型で引っ張っていくってことをやっていても、
その中で必ず、フラット型のコミュニケーションを取った方がいい場面もある。
そこはピラミッドとフラットの使い分けだと思うね。

くに
使い分けが出来るといいね・・・。

思えば、すみえさんが来てくれた2月のFAJの支部イベントでは、実行委員長やったんですが。
初めてファシリテーションに触れる方の体験をすごく大事にしたかったのとFAJ辞めた人にもまた参加したいと思ってもらえるようなイベントにしたいという想いが強くて、その意思をハッキリ表明しちゃったなぁ・・・。でもそれに反発する人も結構いました・・。
でも、最後までその信念やり通してよかったとは思っている。

じん
久々にすみえさんが参加してくれたってことは目標達成だし、よかったね。
反発する人たちの話は「お互いが受け入れ合っているか?」の問題で、受け入れ合いがあれば反発するような視点もすごく大切だと思う。
そういう前提で、実現したい強い意志があるなら、ピラミッド型で引っ張った方が効果的。
僕は機械的に伝えていった方がいいと思ってる。

 

自然淘汰

じん
社会とか、人間の関係性とか人間って、非常に有機的なものだから、
ある意味「ダメな人」もいるよね。

くに
「ダメな人」?

じん
そう。「ダメな人」つまり「できない人」がいてもいいし、そう周りから見られるひとがいるのは当たり前。
ちょっと冷たく聞こえるかも知れないけど、そのままで生き残れないなら淘汰される人は淘汰されていく。

くに
淘汰されちゃうのか。(笑)

じん
ダメな人が淘汰されるのは自然な状態だし、その中でも進化して生き残っていく存在がある。

進化していく組織もあるし、淘汰されていく組織も存在する。
ちゃんと環境に適応できれば、生き残っていけるし、生き残れなければ淘汰される。
シンプルに、ただそれだけのこと。

環境に適応できない人に対して、無理矢理「あなた進化しなさい」って言っても進化できない。

進化のチャンスを提供したり、「こういう見え方があるよね」っていうのを伝えることはできるけど、
それでも淘汰される人は淘汰されていいんじゃないかと思うし、むしろそれが自然だと思う。

くに
きびしいねー。
安心安全なところに留まってるだけだと淘汰されてしまうよってことだね?

じん
残していくべきものをきちんとした形で残せば、必ずそれが次につながっていく。

例えば、今、チームビルディングを伝えていくために自分たちがやっている事をいろいろ調べてるんだけど、
チームビルディングジャパンが現在やっているのと似たようなことが、1960年代の論文に残っていたりする。
なんかそういうのってすごくおもしろい。

くに
あ、わかります!

私も、1960年頃のグループプロセスに働きかけるファシリテーションのはじまりを学び始めてます。
学びを深めていくと自ずとそういう源泉みたいなところに繋がっていきますね。
そこを自分なりに咀嚼して深めていく。それが面白い。

じん
そうね、僕は過去の人が残してくれたものを見つけたときに、「あぁ、これすごい有り難いな」と思うし、
伝わるところにきちんと伝えていけば、そこからその遺伝子が広がっていくんたなぁ、と思う。

昔の遺伝子を我々がもらって、それをまた広げている。
それが進化していくってことだと思うんだよね。

「ファシリテーション」という一つの種(しゅ)、
「チームビルディング」という一つの種、ととらえると、
進化適応して生き残っていく過程で、生き残っていけない遺伝子があっても仕方ない。
伝わらない個体があっても、種の存続という意味では別にいいのかな、と。

くに
遺伝子ね。

じん
一方で、優れていないと判断されてしまうような遺伝子も、
突然変異という観点でいうと、進化のためには必要。だから「ダメな人」もすごく大切。

例えば、社会的弱者とされてしまう人って、マジョリティから見ての当たり前じゃない=突然変異のような状態とも言える。
「あいつダメだよね」と思われるような人も、突然変異種みたいなもの。
その人の考え方や存在があることによって、掛け合わさって新しい進化につながる。
そういう存在を組織の中に残しておくことが、次の進化につながる。
予測可能な当たり前の中に留まっていてはイノベーションは起きないからね。「変なヤツ」「ダメなヤツ」とされてしまう異質なものの中にこそ次世代の当たり前を生み出す可能性が隠れているかも知れない。

くに
まぁ、いい意味での突然変異ってことですよね?まさに多様性の相互作用の結果というか。進化している。

じん
だから、まぁ、「ダメな人」がいてもいいじゃん。(笑)

くに
あはは。(笑)
まぁ、この広く浅いところがあることが、ダメだと言ってるわけではないんですよ。そこから階段上っていって欲しいなってね。

じん
うん、ダメだって言ってるわけじゃないよね。

くに
いろんな人が、より多くの人たちが、
そういうことが自然にできる世の中になっていくためには、
より多くの人たちが、発酵し、深まり、勉強し、・・・みたいな
全員が同じレベルで、というわけではないけれども
その意識を持って一歩ずつでも前に進んでいくっていう風になるといいなぁ、と。

一歩ずつでも、その場に居続けるよりは、とは思うけど、
そういう意味では、一緒にやっていけば、ってことね・・・。

じん
「広めたい」という意志を持っている側からは、
生き残るためにも、ちょっとでも前に進んでほしいっていう気持ちは当然持ってる。
けれど、それで進まないとしても、でもまぁいっか、っていうこと。(笑)
自分から見て「相手がおかしい」と思っても、相手にとってはそれが普通で当たり前。「伝えたい」と思うことは伝えていっていいと思うけど、「受け取りたくない」と思うことも受け取らないことも誰もが選択できる。

くに
なるほどね~。

 

チームビルディング・バイブル

じん
僕が「広める」って視点で広めようと思っているのは何かというと、

例えば誰かがチームビルディングを考えたときに、
これに立ち返れば、このどこかに載ってるみたいな、
チームビルディング全てが整理されたものができるといいな、と思っていて。

くに
階段の上り方も含めてシンプルに整理されたものがあったら、本当に有り難いと思う。
バイブルみたいな!

じん
そうだよね~。

くに
なかなかそこまでやっている人いないですよね。
言語化されてる人。

チームビルディングもファシリテーションも、
なんていうか言語化が難しい領域でもあったりするから、
そういう意味では、私は、じんさんも含めいろんな人を見ながら
盗んできているところがあるんだけど、
そこでは言葉にできないものも学んだりする。

シンプルな箱(パッケージ)にはそういうものが含まれているのかな?

じん
うん。そうだね。

くに
そんなとこも含めて言語化できていると素晴らしい気がする。

じん
シンプルな箱を使える人がたくさん広まっていけば、
絶対その中には、もっと解りたいっていう人が出てくるよ。

自分自身もそうだったな。一番最初は浅いところから入っていった。

たぶん最初にファシリテーションやチームビルディングに触れたのは25歳の頃だったと思うんだけど、今と比べたら、もう、すごく浅かったよね。

当時は、人から教えられることがものすごく嫌いだったから、
ファシリテーションとかチームビルディングに触れて、衝撃だった。
「教えられないけどこんなに学べるやり方があるんだ!」ってね。
「これはすごい、やり方を真似てみよう」って思ったのが始まり。

くに
まさに私もそんな感じです。

じん
スタートはそういうものなのかもね。
大きな衝撃を受けて、それで「型」を一生懸命真似て、実践を重ねるうちに出来るようになる。

くに
でも、型を真似ても打破できない壁があって、
苦しんだりするんですよね。

じん
そう。うまくいかないもんね。

くに
いかない、いかない。
そういう苦しいこと経験しないと階段上ろうとしないのかなぁ。

じん
型だけでうまくいっているうちは、それでいいのかもしれないけど、
いずれうまくいかない時がくる。

僕の場合は、最初に触れたのは欧米スタイルの
チームビルディング・ファシリテーションだったんだけど、
それを真似て日本の企業相手にやり始めたときに、
なんでこんなに上手くいかないだろう、ってなった。

まぁ、浅かったよね、昔はね。アクティビティやって盛り上がればオッケー、みたいなね。
壁にぶつかったおかげで、ちゃんと深く考えられるようになった。

くに
じんさんでもそうなんだ。(笑)

じん
みんなそんなもんだと思うよ。

くに
本当にその通りです。
それがなんか、恥ずかしいな、とか思ってしまうときがあったりして。
だから必死に勉強はしたかな。

じん
恥ずかしいと思えるから、そうやって勉強して深くなっていく。
あっ、これ面白い、とか、あっ、うまくいかない、格好悪いからもっと勉強しよう、とか
そういう風に思える人たちが、ぶわーっとたくさん広まり増えていく中で、
濃さがどんどん濃くなっていく。

くに
そうだね。それでいいのかも。

じん
そういう広め方・広まり方ができるといいよね。

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