第16回『自然体のリーダーシップ(4)個人の主体的動機と組織』
2015年11月05日
※今回の『自然体のリーダーシップ(4)個人の主体的動機と組織』は、
第13回『自然体のリーダーシップ(1)出会い』
河村甚(以下じん)
無理にその人に指示をするとか、強制をするとかではなく、その人の内側から出るその人らしさが表れた行動、一人一人がらしくある主体的、自律的行動というものに基づいて仕事できた方がいい。
本当にチームとして成果を出すということを考えた時にやっぱり全員が主体的であってほしいし、そうすることによってすごい力が出る。
その時に自分らしくいられないとか、自分の内側から発するものではなく「指示されたから」「仕事だから」「お金もらってるから」っていう行動になっちゃうと、それはやっぱり弱い。
もちろん自分の主体的動機でやっていても、仕事でやっていることならその分の賃金なんかはもらうのは当然だけれど、そもそも自分の内側から生まれるものが無いとダメだと思う。たがしーが言っているように指示されて行動するとかではなくて、自分で考えて行動することを促して行くということは本当に大事だよね。
田頭篤(以下たがしー)
ただ、私は自分から動くでいいけど、他の人も同じなのかっていうと、恐らくそうでもない。
じん
そう、これ、みんなそうっていうわけじゃないね。すごくインストラクションしてほしい人たちって結構いる。
自分はたがしーみたいに言われてやるよりは、自分の気持ちで自分がやりたいからやる派なんだけれど、 みんなもそうだろうなって先入観は自分にはあると思う。でもインストラクション、指示が無いと不安っていう人たちも多い。
たがしー
まぁ、自立的行動をする人がたくさん集まってるって超めんどくさいことになるような気はする。僕これやりたい、僕あれやりたい、私はこれ嫌だみたいな。
いやいや、みんながそんな好き勝手やってたら会社どうなっちゃうんだみたいなね 笑。
じん
でも自立とか主体的であるっていうことと好き勝手ともなんか違くないかな。
つまり、動機とかモチベーションとかはそれぞれ色々あり、個性的だからめんどくさいというのはあると思うけど。
たがしー
あー、めんどくさいって言葉を、ちょっと言い換えると・・・。んー、例えば、組織的に上に立っている人の負担は増えるだろうな、と。ちゃんと説明しなきゃいけないとか、納得してもらわなきゃいけないとか。
「おまえはAをやれ」では済まなくなる。「なんでAやらなきゃいけないんですか?」なーんて問いかけられたり。 それにちゃんと応えていかなきゃいけないとかさ。
じん
マネージしていく側としてはそうだよね。
たがしー
昔読んだ『組織デザイン』って本を、最近また読んでてさ。組織を設計していく時にこんなことを考えるといいよといった本。
この本に「組織は分業と調整だ」って書いてあるのね。分業と調整を組み合わせて最大のパフォーマンスを発揮するようにするのが組織なんだと。
一人だと一人分の作業しかできないけれど分業することで色々できるようになるじゃない? 例えばこの本に書いてあったのは宅配便の例。荷物一つ送るのに千円ぐらいで送れる。でもそれを一人だけでやろうとししたら、絶対千円では送れない。電車賃かかるし、その人に払うバイト代?かかるし。なので、ちょっと極端だろうけど、千円で送れることを可能にしているのが分業と言っていい。
とはいえ、分業ってある前提の上で設計されている仕事の分け方だから、設計の意図通りに行かないことがあって。その意図通りにいかなかった時になんとかするのが「調整」。実際の組織で、その調整を担っているのが管理職。
その図式で考えると、分業がどんどん複雑になっていって、かつ環境がどんどん変わっていくとすると、調整の負荷がどんどん上がっていく。それはつまり、今の管理職の負荷が上がって大変になるという話でさ。
この、分業と調整っていう話、なんかすごく面白くて。さっきの「めんどくさい」をあらためて考えると、この分業している人たちが「おれは分業Aって言われてるけどBまでやりたい」って言ったり「僕の価値観で言うとCも僕がやったほうがいい」みたいな事を言い始めるわけ。そうすると分業が分業として成り立たなくなるから、今度はそこまでも調整しなきゃならなくなる・・・っていうめんどくささなんだろうなと。
じん
なるほど、あると思う。
そこで感じるのは2つあって、一つは一人一人が内側から出てくるものやその人らしさを活かしてできることを最大限組織の中で発揮できるように管理職がマネージしてやっていくのが大切ということ。
あとチームとして見た時にちゃんと明確なゴールを共有していた時にメンバー同士役割を取り合うという事が起こるよね。つまり穴が生まれない。
このメンバーでこのゴールへ向かうなら自分は営業が得意だからその役割を取ろうだとか、普段は率先してやる役割ではないけれど。ある人が病欠なり抜け落ちた時でも穴を埋め合うということが起こるなと思って。
分かりやすく目の当たりにするのはうちのチームビルディング合宿なんかでチームで仕事をすることの要素が凝縮されたようなプログラムをやっていると、すごく本気になって取り組んでいるときに役割を取り合うということが起こるんだよね。違う事をやったときには違う役割になっていたり。
チームが本気になって目標に向かった時って「自分はこれやりたいからこれしかやらない」とか「自分はこれ向いてないから」っていう風にはあまりなっていかない。
たがしー
それで思い出した。企業が、創業してからだんだん成熟していく話。
うちの会社で起業家支援をやってるのね。それを担当してる人から聞いた話なんだけどさ。起業した当初は、お金もないし、人もいないし、オフィスもないし・・・と、無いものばっかりだから、その無い中で何とかしようとするんだって、みんな。
その時点のメンバーの中で、営業できる人が営業するし、広報できる人が広報する。もし、できる人がいなかったらみんなでなんとか穴埋めするっていう・・・。まさに今みたいなさ、チームとして活動するっていう感じ。
それも個々人がバラバラな事をするって言うよりも、何か一定のビジョンがあって、それに向かって邁進するっていうのかな。
じん
起業する時ってまさにそうだよね。
たがしー
それが、成熟していくとどうなるかって言うと、もうこれをやらなきゃいけないっていう枠が決まっちゃっていてそのなかでどう人を割り当てるかに問題が変わってきちゃうんだよね。そうするとお互いに穴を埋め合っていくってのがやりづらくなる。例えば、従業員2万人とかになると、もうどこが穴なのかすら分からない 笑。仮に穴が見つかって埋めようとしても、分業で文化が分かれちゃってるから、埋めようと手を差し伸べると、「手出してくるなよ」ってなっちゃう。
分業することで、効率も生産性もすごくあげられる反面、「この人たちだからできること」ってのはやりにくくなるんだろうなとは思う。
じん
大きくなると人数が多いだけでもコミュニケーションの障害となるよね。
たがしー
トヨタとかすごいなと思うんだけどさ。あれだけの規模の会社で、最高益更新中とか。まさに組織のパワーだよね。一人だったら絶対できない。
じん
大きな組織でちゃんと成果出しているところはカルチャーをしっかり持ってるよね。
一人一人の自分らしさを一人一人が理解しているのと併せて、「自分たちらしさって何か?」というものを一人一人がしっかり理解してる会社はすごいパフォーマンスを発揮してる。
それはどんなに大きくなっても、強い思いを持って設立した創業者が亡くなっていてもそのカルチャーが残っていたりとか。
ディズニーとかね。創業者の思いがカルチャーになって残ってる。そこまでカルチャーになっていると、どんなに組織が大きくても一つの文化として生き続けて成長していける。