第59回『D&I 対立はなぜ起こるのか?』
2021年04月29日
「ダイバーシティ&インクルージョン」がチームにどう影響するのかについてシリーズでお伝えしています。
ダイバーシティを考えるときに切っても切れないのが、「対立」や「分断」です。
一人ひとりの違いがあるということは、対立のタネ、分断のタネにもなります。
今回は、対立や分断はなぜ起こるのか、どうしたらそれを超えていけるのかについてお伝えします。
対立や分断は、目に見えてわかるところだけでなく、自分では意識していない些細なところにも存在しています。
例えば、「あいつは分かってない」逆に「分かってもらえない」と感じても、表面化させずに自分の中に収めていることはありませんか。
これらは、実は対立や分断のタネです。
「あいつは分かってない」と感じるのは、相手が理解していないときだと思うかもしれませんが、実はそうではありません。相手と自分が異なる当たり前を持っているときに、相手が分かってないと感じるのです。
相手と自分が違う考え方を持っていたとしても、「あいつが分かってない」という捉え方をする必要はありません。
また、相手の受け止め方が自分とは違ったとしても、「分かってもらえてないな」という捉え方をする必要もありません。
対立や分断が起こるのは、自分と相手の当たり前が違っていて、かつ、お互いの当たり前を受け入れられないときです。
自分と相手の当たり前が違う場面というのは、数多く見られます。
例えば、会社の中では、上司・部下の間では当たり前が異なります。上司には上司の、大切にしている当たり前があり、部下は部下で、自分の大切にしている当たり前があります。ほかにも、部門間・部署間の対立などもよく見られます。
しかし、これらを対立や分断だと決めつけるのではなく、「違う当たり前を持っているだけだ」と捉え直すと、異なるアプローチができるようになります。
ダイバーシティ、つまり違いは、今までそこになかったような素晴らしいイノベーションや革新を生み出すタネです。
ダイバーシティ&インクルージョンは、いろんな人の異なる視点や価値観を交ぜ合わせることにより新たな価値を生み出していこうとする取り組みだといえます。
対立や分断は日常的に起こるけれど、イノベーションや想定外な発想はあまり目にしないように感じられるかもしれません。
しかし、どちらも「みんなが違う視点や価値観を持っている」という同じベースから生まれています。
イノベーションや革新と、対立や分断。これらはどちらも、実は同じ土壌から生まれている。この視点を持つと、イノベーションのタネが日常に溢れていることに気づくことでしょう。
多様性を活かし、これまでに無いものを生み出していくためには、対立をおそれず、異なる当たり前を持っていることを認め、お互いの違う当たり前を受け入れ合う覚悟を全員が持つことが必要です。
ここでみなさんに、対立・分断からイノベーション・新たな価値を生み出す状態に切り替えるためのポイントをご紹介しましょう。
「あいつは分かってない」「分かってもらえてない」と思ったとき、つまり、対立や分断を感じたときにできることがあります。
「あいつは分かってない」と思ったときに、通常取る行動は以下の2種類です。
1つ目は、相手に分からせようとする。これは対立につながります。
2つ目は、自分があきらめる。こちらは分断につながります。
通常はこの2つの選択肢から行動を選んでいますが、実は第3の選択肢が存在します。
この第3の選択肢を選ぶと受け入れ合いが起こり、チームにイノベーションを起こすことができるのです。
では、第3の選択肢は何か。
それは「分からせようとする」でも「あきらめる」でもなく、「分かろうとする」という選択肢です。
「あいつは分かってない」または「分かってもらえない」と感じたときに、自分から相手を分かろうとするということです。
ついつい、「分かってないな」と思うと、自分のことを分かってもらいたいという気持ちが強くなってしまい、どうしたら自分のことを分かってもらえるか…という思考になりがちですが、誰かが分かろうとしてくれると心を開いて接することができます。
さらに、「分かってもらえている」と感じられれば、その人が思っていることをもっとオープンに伝えてくれるようになります。
「この人は、どういう考え方に基づいて、どの視点で考えているんだろう」と、一生懸命分かろうとするというアプローチをしてくれる人に対しては、みんな心を開いてコミュニケーションを取ることができます。
お互いに分かろうとすれば、受け入れ合いになり、インクルージョンになり、ダイバーシティから素晴らしいものを生み出していけるチームになっていけるのです。
自分と相手の当たり前に違いを感じたときに、「分からせようとする」「あきらめる」この2つの選択肢しか日常的に使っていなかった人は、第3の選択肢があることを思い出し、相手を理解しようとしてみてください。きっと対立・分断のチームから創造的なチームに変わっていきます。