第6回『フラット型組織・ピラミッド型組織 理論編(前編)』
2019年04月18日
ここまでピラミッド型組織とフラット型組織についていろいろとお話してきました。
このコラムで語っているチームビルディングは、私たちが多くの企業で成果を上げてきたチームビルディングプログラムの実践的な知見と、何十年も前から研究され続けている組織開発の分野や、経営学・心理学などの分野の調査と研究の成果に基づいています。
ピラミッド型組織、フラット型組織に関連する理論や考え方を、前編・後編に分けてご紹介します。
■コンティンジェンシー理論
まず、源流にあるのは、1960年代まで遡る「コンティンジェンシー理論」です。
コンティンジェンシー理論は、組織と組織マネジメントについての理論です。
この理論の根幹にある考え方は「完璧な組織構造は存在しない」というものです。
「完璧な組織構造は存在しない」というのは、つまり環境によって最適な組織構造は変わるという意味です。
どういった組織課題や環境に対して、どういった組織構造が有効なのか・・・という研究がなされています。
その中でも有名なものが、バーンズ&ストーカーによる研究です。この研究では、組織を機械的組織と有機的組織という2つに分けて考えています。
“機械的組織”というのは、これまでコラムでお話ししてきた“ピラミッド型組織”と同じだと考えてください。同様に、“有機的組織”というのが、“フラット型組織”です。
イギリスの企業を対象にした調査から、
変化が激しく、不確実性の高い環境に向いたフラット型の“有機的組織”と、
環境の変化が少なく、ルーチンの仕事が多いところに向いたピラミッド型の“機械的組織”があるということが見出されました。
“機械的組織”というのは、仕事が上から下へと流れて行き、機械的に無駄を排除するような仕組みの組織です。
“有機的組織”という言葉は、日常的にあまり使わないかもしれませんね。
これは、ピラミッド型のように上から仕事の流れが降りて来るものではなく、個と個が有機的につながり合ったり離れたりしながら成果を出していくような組織構造のことを指しています。
■チーミング
こうした研究の源流があって、最近では、エイミー・エドモンドソンの研究が分かりやすく有名です。組織づくりの研究を非常にわかりやすく整理して、組織づくりを“チーミング”という言葉で表現しています。ここで言われていることも、コンティンジェンシー理論と類似します。
エイミー・エドモンドソンは、組織が取り組む業務の特性を“プロセス知識スペクトル”というもので表現しています。(プロセス知識:望んだ結果を出すための方法についての知識)
知識の習熟度が高いもの かつ、不確実性が低いもの・・・これはルーチンの業務と言われているものです。
知識の習熟度が高い・・・つまり、誰かが答えを知っているものは、機械型組織、ピラミッド型組織と呼ばれる組織構構造で解決を図りやすい課題です。
ルーチンの業務については、ピラミッド構造で、
確実に正しいやり方を、その方法を知らない人たちに伝達していくことによって、業務を確実にこなしていくことができます。
では組織の中で、知識の習熟度が低く、不確実性が高い業務・・・スペクトルの逆の端になるわけですけれども、これはイノベーションの業務と呼ばれています。
イノベーションの業務というのは、誰も答えを知らない、革新的な仕事。
無いものを生み出していくような業務なので、これをピラミッド型でやろうとしてもうまくいきません。
上の人も答えを知らない、下の人も答えをもちろん答えを知らない。だから、みんなで知恵を寄せ集めて考えていく。そういった答えの出し方をします。
正解を伝えていくというより、みんなで知恵を寄せ合って最適解を導き出していくというアプローチです。
『チーミング』の中では、このような考え方が語られています。
後編へ続く・・・
参考キーワード/文献
- コンティンジェンシー理論 Contingency Theory
- バーンズ&ストーカー 機械的組織 有機的組織 T. Burns, G. M. Stalker (1969) The Management of Innovation, Mechanistic and Organic Systems
- エイミー・エドモンドソン チーミング チームが機能するとはどういうことか Amy Edmondson (2012) Teaming: How Organizations Learn, Innovate, And Compete In The Knowledge Economy
- カネヴィンフレームワーク Cynefin Framework